大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告と節税相談を年間100件以上受ける立場から、高額備品の一括経費化のテクニックを解説します。
高額な備品を購入する個人事業主に向けて、少額減価償却の特例で一括経費にする方法を解説します。この記事を読めば、30万・20万・10万円の使い分けが分かり、その年の節税を最大化できます。令和8年度改正の動向も反映しています。
🏆 結論:青色申告者は30万円未満の備品を購入年に全額経費にできる
通常、10万円以上の備品は数年に分けて経費化(減価償却)しますが、青色申告者は少額減価償却資産の特例で、一定額未満の資産を購入した年に全額経費にできます。対象は取得価額30万円未満(2026年4月1日以降取得分は40万円未満に拡大)で、年間合計300万円までが上限です。利益が大きく出た年に高額備品を購入して一括経費にすれば、その年の税負担を抑えられます。10万円・20万円・30万円の金額帯で処理方法を使い分けるのがテクニックです。
少額減価償却の特例とは
少額減価償却の特例とは、本来は数年に分けて経費にする資産を、購入した年に一括で経費にできる制度です。原則として、取得価額10万円以上の備品(パソコン・機材・家具など)は減価償却の対象となり、法定耐用年数にわたって少しずつ経費化します。個人事業主の節税の全体像は「個人事業主の節税完全ガイド」で整理しています。
しかし、青色申告者には少額減価償却資産の特例(30万円未満)が認められており、これを使えば購入年に全額を経費にできます。利益が出た年の節税に直結する、実務で使い勝手のよい制度です。
30万・20万・10万円の使い分け【判定表】
備品の取得価額によって、選べる処理方法が変わります。30万・20万・10万円の使い分けを判定表で整理します。
| 取得価額 | 選べる処理 | 特徴 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額その年の経費(消耗品費) | 青色・白色問わず可・最もシンプル |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(3年均等償却)/少額特例 | 一括償却資産は償却資産税の対象外 |
| 20万円以上30万円未満 | 少額減価償却資産の特例(一括経費) | 青色申告者限定・年間300万円まで |
※10万円以上20万円未満は、一括償却資産(3年償却)と少額特例(一括経費)のどちらも選べます。その年の利益を圧縮したいなら一括経費、毎年の償却資産税を避けたいなら一括償却資産が有利です。
💡 実務のポイント
弊所では、利益が大きい年は少額特例で一括経費、利益が少ない年は一括償却資産や通常償却に回す、という使い分けをご提案しています。少額特例で経費化した資産は償却資産税(固定資産税)の対象になりますが、一括償却資産(20万円未満を3年償却)なら償却資産税の対象外です。節税効果と償却資産税の両面で、金額帯ごとに最適な処理を選ぶのがコツです。
少額減価償却資産の特例(30万円未満)の要件
少額減価償却資産の特例を使うには、次の要件を満たす必要があります。
- 青色申告書を提出する個人事業主・中小企業者等であること(白色申告は不可)
- 取得価額が30万円未満の減価償却資産であること(2026年4月以降取得分は40万円未満)
- その年に取得し、事業に使い始めていること
- 確定申告書に明細を記載すること
対象資産は、パソコン・カメラ・工具・家具などの有形資産のほか、ソフトウェアなどの無形資産も含まれます。中古資産も対象です。青色申告が前提になるため、まだの方は「青色申告で65万円節税する方法」もあわせてご覧ください。
年間300万円上限の注意点
少額減価償却資産の特例には、年間300万円上限があります。1年間に特例を適用できる取得価額の合計は300万円までです。
⚠️ 300万円を超えた分は通常の減価償却に
たとえば25万円の備品を13個(合計325万円)購入した場合、特例で一括経費にできるのは300万円までで、残り25万円分は通常の減価償却になります。高額な設備投資を予定している年は、300万円の枠を意識して購入時期を分散すると、特例を有効に使えます。なお、判定は税抜・税込のどちらかは経理方式によります。
一括償却資産(20万円未満)という選択肢
一括償却資産(20万円未満)も覚えておきたい選択肢です。取得価額10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等に償却する「一括償却資産」として処理できます。
| 項目 | 少額特例(一括経費) | 一括償却資産(3年償却) |
|---|---|---|
| 経費化のタイミング | 購入年に全額 | 3年で均等 |
| 償却資産税 | 対象になる | 対象外 |
| 申告 | 青色申告者限定 | 白色でも可 |
※20万円未満の資産を多く買う事業では、償却資産税の対象外になる一括償却資産が有利なこともあります。償却資産税は資産の合計額が一定(課税標準150万円)未満なら課税されないため、保有資産の状況で判断します。
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備品の処理方法の選択から確定申告まで、節税を最大化する処理をご提案します。
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少額特例の節税効果を、25万円のパソコンを購入したケースで見てみましょう。
🧮 25万円のパソコンを購入した場合
通常の減価償却(パソコンは4年償却)なら、初年度の経費は約6.25万円どまりです。一方、少額特例を使えば購入年に25万円を全額経費にできます。税率20%なら、初年度の節税額は通常償却の約1.25万円に対し、特例なら約5万円。利益が出た年に一括経費化すれば、その年の税負担を効果的に抑えられます。
注意したいのは、特例を使っても払う税金の総額が減るわけではなく、経費にするタイミングが早まるという点です。とはいえ、利益が大きく税率が高い年に前倒しできる効果は大きく、資金繰りの改善にもつながります。共済やiDeCoなど他の節税策とあわせた最適化は「小規模企業共済で節税する方法」「iDeCoの節税効果」も参考になります。
令和8年度の動向【30万円→40万円に拡大】
制度の令和8年度の動向も押さえておきましょう。令和8年度税制改正により、少額減価償却資産の特例の対象が見直されました。
📢 令和8年度改正で30万円未満→40万円未満に
少額減価償却資産の特例は、従来の取得価額30万円未満から、2026年4月1日以降に取得した資産については40万円未満に引き上げられました。年間合計300万円の上限は据え置きです。あわせて適用期限が3年延長され(令和10年度末まで)、対象となる中小企業者の従業員数要件は500人以下から400人以下に引き下げられています。物価上昇で高性能な機材が30万円を超えるケースが増えていたため、現場に即した改正といえます。
| 取得時期 | 対象となる取得価額 |
|---|---|
| 2026年3月31日まで | 30万円未満 |
| 2026年4月1日以降 | 40万円未満 |
※どちらも年間合計300万円までが上限です。40万円近い機材を一括経費にしたい場合は、2026年4月以降の取得が有利になります。
確定申告ドットコムのサポート実例
弊所では、備品の処理方法の選択から確定申告まで一貫してサポートしています。実際の対応例を紹介します。
実例1:機材を多く使う動画クリエイターAさん(料金:年59,800円)
利益が大きく出た年に、28万円のカメラと25万円のPCを少額特例で一括経費化。合計53万円をその年の経費にし、税率23%帯で約12万円の節税を前倒しできました。年間300万円の枠も意識した購入計画を支援しています。
実例2:備品が15万円中心の小売業Bさん(料金:年49,800円)
15万円前後の什器が多く、償却資産税が気になるとのご相談。一括償却資産(3年償却)を選ぶことで償却資産税の対象外とし、節税と固定資産税のバランスを最適化しました。金額帯ごとの使い分けが効いた例です。
実例3:高額機材を予定する製造業Cさん(料金:年69,800円)
38万円の機材購入を検討していたため、2026年4月以降の取得にすることで40万円未満の特例対象に。改正のタイミングを踏まえた購入時期の調整で、一括経費化を実現しました。
よくある質問
まとめ:金額帯ごとに最適な処理を選んで一括経費化
少額減価償却資産の特例を使えば、青色申告者は30万円未満(2026年4月以降は40万円未満)の備品を購入年に全額経費にできます。年間合計300万円までが上限です。重要なのは、10万・20万・30万円の金額帯ごとに最適な処理を選ぶこと。利益が大きい年は少額特例で一括経費、償却資産税を避けたいなら一括償却資産、というように使い分けます。特例は税金の総額を減らすのではなく経費化を前倒しするものですが、税率の高い年に活用すれば効果は大きく、資金繰りも改善します。令和8年度改正で対象が40万円未満に拡大されたため、購入時期にも注目しましょう。判断に迷う場合は「節税を税理士に依頼すべきか」、業種別の注意点は「業種別の確定申告ガイド」もご確認ください。
📋 この記事のポイント
- 青色申告者は30万円未満の備品を購入年に全額経費化できる
- 年間合計300万円までが上限
- 10万・20万・30万円で処理方法を使い分ける
- 20万円未満の一括償却資産は償却資産税の対象外
- 特例は税金を減らすのでなく経費化を前倒しする制度
- 利益が大きく税率の高い年に活用すると効果的
- 令和8年度改正で対象が40万円未満に拡大(2026年4月以降)
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