大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告と節税相談を年間100件以上受ける立場から、赤字年こそ重要な申告の使い方を解説します。
赤字が出た個人事業主に向けて、赤字を活用した節税方法を解説します。この記事を読めば、損益通算と純損失の3年繰越の仕組みが分かり、赤字でも確定申告すべき理由を理解して将来の節税につなげられます。
🏆 結論:赤字こそ申告すべき。青色なら損失を3年繰り越して将来の黒字と相殺できる
事業が赤字でも、確定申告をすることで節税につながります。まず、その年の赤字は給与など他の所得と相殺(損益通算)でき、すでに源泉徴収された税金が還付されることがあります。さらに青色申告者なら、相殺しきれない赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。これにより黒字に転じた年の税負担を大きく減らせます。赤字だからと申告しないのは大きな損。赤字こそ申告して、将来の節税の権利を確保することが重要です。
赤字も節税に使える
「赤字だから申告しなくていい」と考える方がいますが、これは大きな誤解です。赤字は将来の節税に使える貴重な資産になります。むしろ黒字の年よりも、赤字の年の申告のほうが将来の税負担を左右する重要な意味を持つこともあります。個人事業主の節税の全体像は「個人事業主の節税完全ガイド」で整理しています。
赤字を活用する方法は主に2つ。その年のうちに他の所得と相殺する「損益通算」と、相殺しきれない分を翌年以降に持ち越す「純損失の繰越控除」です。どちらも確定申告をして初めて使えます。逆に言えば、申告を怠ると赤字はただの損失で終わり、節税の機会を逃してしまいます。
損益通算の仕組み
損益通算の仕組みとは、ある所得の赤字を、他の所得の黒字と相殺できる制度です(所得税法第69条)。損益通算できるのは、事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得の4種類の赤字です。
🧮 損益通算の例
副業で個人事業を営む会社員が、事業で50万円の赤字を出したとします。給与所得が400万円なら、損益通算で400万円 − 50万円 = 350万円が課税対象になります。給与からはすでに税金が源泉徴収されているため、確定申告でこの相殺をすると、払いすぎた税金が還付されます。
このように、給与所得などと相殺することで、源泉徴収された税金が戻ってくるのが損益通算のメリットです。事業専業の方でも、不動産所得など他の所得があれば相殺できます。なお、損益通算には順序のルールがあり、まず同じ種類の所得内で計算したうえで、経常所得グループと譲渡・一時所得グループの間で差し引きます。赤字の種類によっては相殺できる所得が限られる場合があるため、複数の所得がある方は順序を意識して計算することが大切です。
純損失の3年繰越(繰越控除)
損益通算してもなお引ききれない赤字は、純損失として翌年以降に繰り越せます。これが純損失の3年繰越(繰越控除)で、青色申告者の大きな特典です(所得税法第70条)。開業から数年は売上が安定せず赤字になりやすいため、この繰越制度は事業を軌道に乗せる時期の支えになります。
| 年 | その年の所得 | 繰越損失の使い方 |
|---|---|---|
| 1年目 | ▲300万円(赤字) | 純損失300万円を繰越 |
| 2年目 | 100万円(黒字) | 100万円と相殺・課税所得0・残り200万円繰越 |
| 3年目 | 150万円(黒字) | 150万円と相殺・課税所得0・残り50万円繰越 |
| 4年目 | 200万円(黒字) | 残り50万円と相殺・課税所得150万円 |
※純損失は発生年の翌年以降3年間繰り越せます。黒字に転じた年の課税所得を圧縮でき、開業初期に赤字が出やすい事業では特に効果的です。
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赤字年の損益通算・繰越の手続きを正しく行い、将来の節税につなげます。
料金・サービスはこちらから →青色申告が条件【白色との違い】
純損失の繰越控除を受けるには、青色申告が条件です。白色申告では、原則として純損失を繰り越せません(被災事業用資産の損失など一部の例外を除く)。つまり、同じ赤字でも青色か白色かで、その後の税負担が大きく変わるということです。これから事業を始める方や、赤字が見込まれる方は、早めに青色申告の承認申請をしておくと安心です。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 損益通算 | できる | できる |
| 純損失の3年繰越 | できる | 原則できない |
| 繰戻し還付 | できる | できない |
※赤字が出る可能性がある事業ほど、青色申告のメリットが大きくなります。青色申告のメリット全般は「青色申告で65万円節税する方法」をご覧ください。
繰戻し還付という選択肢
青色申告者には、純損失の繰戻し還付という選択肢もあります(所得税法第140条)。前年も青色申告をしていれば、今年の純損失を前年に繰り戻し、前年に納めた所得税の還付を受けられます。繰越控除が「将来の黒字と相殺する」のに対し、繰戻し還付は「過去に納めた税を取り戻す」もので、向きが逆になります。
💡 繰越と繰戻し、どちらを選ぶか
前年が黒字で税金を納めていたなら、繰戻し還付で今すぐ税金を取り戻すのも一案です。一方、来年以降の黒字が見込めるなら、繰越控除で将来の税負担を減らすほうが有利なこともあります。前年の税率と将来見込まれる税率を比較して選ぶのがポイントです。資金繰りを急ぐなら繰戻し還付が現実的です。
赤字でも申告するメリット
赤字でも申告するメリットは、節税以外にもあります。主なものを整理します。
- 純損失を3年繰り越せる(青色)→ 将来の黒字年の節税
- 損益通算で他の所得の税が減り、源泉徴収分が還付される
- 国民健康保険料が下がる(所得に連動するため)
- 所得証明が出せ、融資審査や各種給付の判定に使える
⚠️ 申告しないと繰越の権利を失う
赤字の年に確定申告をしないと、純損失の繰越という権利を失います。翌年黒字に転じたとき、本来なら相殺できたはずの赤字を使えず、余分に税金を払うことになります。「赤字だから申告不要」ではなく「赤字だからこそ申告して権利を確保する」のが正解です。期限内申告が繰越の条件である点にも注意しましょう。
赤字年の節税は見落とされがちですが、青色申告で正しく手続きすれば将来の大きな節税につながります。特に、赤字の年こそ帳簿をきちんと整え、純損失の金額を正確に申告しておくことが、翌年以降の繰越をスムーズにします。共済やiDeCoなど黒字年の節税策は「小規模企業共済で節税する方法」「iDeCoの節税効果」、業種別の注意点は「業種別の確定申告ガイド」も参考になります。
確定申告ドットコムのサポート実例
弊所では、赤字年の損益通算・繰越手続きから確定申告まで一貫してサポートしています。実際の対応例を紹介します。
実例1:開業初年度に赤字が出たフリーランスAさん(料金:年49,800円)
開業初年度に設備投資で250万円の赤字。青色申告で純損失を繰り越し、2年目以降の黒字と相殺。3年間で課税所得をゼロに抑え、トータルで約50万円の節税につながりました。「赤字でも申告」の効果が出た典型例です。
実例2:副業の赤字を給与と相殺した会社員Bさん(料金:年49,800円)
副業の事業所得で40万円の赤字。給与所得と損益通算し、確定申告で源泉徴収された税金の一部が還付されました。損益通算の手続きを正しく行い、還付を受けられました。
実例3:繰戻し還付を選んだ建設業Cさん(料金:年59,800円)
前年は黒字で税金を納めていましたが、当年は大きな赤字に。資金繰りを優先し、繰越でなく純損失の繰戻し還付を選択。前年分の所得税の還付を受け、当面の資金繰りを改善しました。
よくある質問
まとめ:赤字こそ青色で申告し、将来の節税につなげる
事業が赤字でも、確定申告をすれば節税につながります。その年の赤字は損益通算で他の所得と相殺でき、源泉徴収された税金が還付されることがあります。さらに青色申告者なら、相殺しきれない純損失を3年間繰り越し、将来の黒字と相殺できます。前年が黒字なら繰戻し還付で税金を取り戻す選択肢もあります。赤字だからと申告しないと、これらの権利を失い、将来余分に税金を払うことになります。赤字こそ申告して、将来の節税の権利を確保することが大切です。一度失った繰越の権利は取り戻せません。手続きに迷う場合は「節税を税理士に依頼すべきか」もご確認ください。
📋 この記事のポイント
- 赤字は損益通算で他の所得と相殺でき、税金が還付されることがある
- 青色申告なら純損失を3年間繰り越せる
- 繰り越した損失で将来の黒字年の税負担を減らせる
- 白色申告は原則繰越・繰戻しができない
- 前年黒字なら繰戻し還付で税金を取り戻せる
- 赤字でも国民健康保険料の軽減などのメリットがある
- 申告しないと繰越の権利を失ってしまう
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