大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告と節税相談を年間100件以上受ける立場から、医療費控除の使い方をわかりやすく解説します。
医療費が多い個人事業主・家族に向けて、医療費控除で節税する方法を解説します。この記事を読めば、控除額の計算と10万円の壁が分かり、セルフメディケーション税制とどちらが得かを判断できます。
🏆 結論:年間医療費が10万円を超えたら医療費控除、超えないならセルフメディケーション税制を検討
医療費控除は、家族分も含めた年間医療費が一定額を超えた場合に、その超えた分を所得から差し引ける制度です。控除額は「年間医療費 − 保険金等 − 10万円」で、上限は200万円。一方、セルフメディケーション税制は、対象のOTC医薬品を年12,000円超購入した場合に使える制度です。両者は選択制(どちらか一方)で、年間医療費が10万円を超えるなら通常の医療費控除、超えないがOTC医薬品をよく買うならセルフメディケーション税制が有利になりやすいです。どちらも所得控除なので、節税額は控除額×税率です。
医療費控除とは
医療費控除とは、1年間(1月〜12月)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、その超えた分を所得から差し引ける所得控除です(所得税法第73条)。本人だけでなく、生計を一にする家族(配偶者・子・親など)の医療費も合算できます。個人事業主が使える控除の全体像は「個人事業主の節税完全ガイド」で整理しています。
医療費控除は会社員でも個人事業主でも使えますが、年末調整では適用できず、確定申告が必要です。個人事業主はもともと確定申告をするため、忘れずに申告に含めましょう。
医療費控除の計算と10万円の壁
医療費控除の計算は次の式で行います。ポイントになるのが10万円の壁です。
🧮 医療費控除額の計算式
控除額 = 年間の医療費 − 保険金などで補填された額 − 10万円
(上限200万円。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等 × 5%」を差し引きます)
つまり、年間医療費が10万円を超えた部分が控除の対象になります。たとえば年間医療費30万円・保険金補填なしの場合、控除額は30万円 − 10万円 = 20万円。税率20%なら所得税・住民税あわせて約6万円の節税です。
| 年間医療費 | 控除額 | 節税額(税率20%・住民税含む) |
|---|---|---|
| 15万円 | 5万円 | 約1.5万円 |
| 30万円 | 20万円 | 約6万円 |
| 50万円 | 40万円 | 約12万円 |
※保険金等で補填される金額(出産育児一時金・高額療養費・保険金など)は差し引きます。所得が低い人は10万円より低い基準(所得の5%)になるため、医療費が少なくても控除を受けられることがあります。
対象になる費用・対象外の費用
医療費控除の対象になる費用と、対象外の費用を整理します。意外と見落としやすいので確認しましょう。実務では、対象になるのに申告し忘れているケースが多く、特に通院交通費や歯科の自由診療、子どもの治療費などが拾い漏れがちです。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 診療費・治療費・入院費 | 健康診断・人間ドック(異常なしの場合) |
| 治療のための医薬品代 | 健康増進のサプリメント |
| 通院の公共交通機関の交通費 | 自家用車のガソリン代・駐車場代 |
| 歯科治療(治療目的)・出産費用 | 美容整形・美容目的の歯列矯正 |
| 治療のためのはり・きゅう・マッサージ | 予防接種・近視矯正の通常メガネ |
※通院の交通費は対象ですが、領収書のない電車・バス代は日付・経路・金額をメモで記録します。健康診断は原則対象外ですが、その結果で重大な病気が見つかり治療した場合は対象になることがあります。
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料金・サービスはこちらから →セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、対象となるOTC医薬品(薬局で買える特定の市販薬)を多く購入した人向けの制度です。医療費控除の特例として設けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 特定一般用医薬品等(対象のOTC医薬品)の購入費 |
| 控除額 | 年間購入額 − 12,000円(上限88,000円) |
| 条件 | 健康診断・予防接種など健康の維持増進の取組をしていること |
※年12,000円を超えて対象医薬品を購入した部分が控除対象です。対象商品にはレシートに識別マークが付いています。健康診断や予防接種を受けていることが適用条件です。
どちらが得か【有利判定】
医療費控除とセルフメディケーション税制は選択制で、どちらが得か(有利判定)を見極める必要があります。両方を同時に使うことはできません。一度どちらかで申告すると、その年についてはもう一方への変更ができないため、申告前にしっかり比較することが大切です。
| 状況 | 有利な制度 |
|---|---|
| 年間医療費が10万円を超える | 通常の医療費控除が有利な傾向 |
| 医療費は10万円未満だがOTC医薬品をよく買う | セルフメディケーション税制 |
| 両方に該当する | 控除額が大きいほうを選ぶ |
💡 実務のポイント
弊所では、まず家族全員分の医療費を集計し、10万円を超えるかを確認します。超えていれば通常の医療費控除、わずかに届かない場合はOTC医薬品の購入額を確認してセルフメディケーション税制を検討します。判断のコツは「控除額がいくらになるか」を両方で計算し、大きいほうを選ぶこと。レシートを1年分まとめて保管しておくと、年明けの判定がスムーズです。
申告手続き
どちらの制度も確定申告で適用します。医療費控除は年末調整では受けられないため、会社員でも確定申告が必要です。手続きの流れは次のとおりです。
- 1年分の医療費(またはOTC医薬品の購入額)を集計する
- 医療費控除の明細書を作成する(健康保険の医療費通知を使うと簡略化できる)
- 確定申告書に控除額を記入して提出する
- レシート・領収書は提出不要だが5年間保管する
医療費控除は青色申告・白色申告にかかわらず使えます。他の所得控除とあわせて漏れなく申告しましょう。控除全体の取りこぼし防止は「青色申告で65万円節税する方法」、共済やiDeCoとの組み合わせは「小規模企業共済で節税する方法」「iDeCoの節税効果」も参考になります。業種別の注意点は「業種別の確定申告ガイド」をご覧ください。
確定申告ドットコムのサポート実例
弊所では、医療費の集計から有利判定、確定申告まで一貫してサポートしています。実際の対応例を紹介します。
実例1:出産があったフリーランス家庭Aさん(料金:年49,800円)
出産費用と通院費で年間医療費が約40万円。出産育児一時金を差し引いても10万円を超えていたため、通常の医療費控除を適用。控除額約20万円で、税率20%帯で約6万円の節税となりました。通院交通費の集計も支援しました。
実例2:OTC医薬品をよく買う個人事業主Bさん(料金:年49,800円)
年間医療費は8万円で10万円に届かず。一方、対象のOTC医薬品を年間5万円購入していたため、セルフメディケーション税制を選択。控除額3.8万円を確保しました。健康診断を受けている点も適用条件を満たしていました。
実例3:両制度で迷っていたデザイナーCさん(料金:年59,800円)
医療費とOTC購入の両方があり、どちらが得か迷われていました。両方で控除額を計算し、控除額の大きい通常の医療費控除を選択。集計から明細書作成まで代行し、確実に還付を受けられました。
よくある質問
まとめ:10万円を境に2制度を使い分ける
医療費控除は、家族分を含めた年間医療費が10万円を超えた部分を所得から差し引ける制度です(上限200万円、所得200万円未満は所得の5%が基準)。控除額×税率が節税額になります。一方、セルフメディケーション税制は対象のOTC医薬品を年12,000円超購入した場合に使え、医療費控除との選択制です。年間医療費が10万円を超えるなら通常の医療費控除、超えないがOTC医薬品をよく買うならセルフメディケーション税制が有利になりやすいです。両方該当する場合は控除額の大きいほうを選びましょう。まずは家族全員分のレシートを1年分集めることから始めてください。判断に迷う場合は「節税を税理士に依頼すべきか」もご確認ください。
📋 この記事のポイント
- 医療費控除は「年間医療費 − 保険金等 − 10万円」(上限200万円)
- 所得200万円未満の人は10万円でなく所得の5%が基準
- 生計を一にする家族の医療費も合算できる
- 通院交通費は対象、自家用車のガソリン代は対象外
- セルフメディケーション税制はOTC医薬品12,000円超が対象
- 2制度は選択制で、控除額の大きいほうを選ぶ
- レシートは提出不要だが5年間保管する
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