大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告を年間100件以上代行している実務経験から、通信費の按分でつまずきやすいポイントを具体的に解説します。
スマホやネット代を経費にしたい個人事業主に向けて、通信費の範囲と家事按分の割合の決め方を具体的な数字で解説します。読めば、自分のケースで何割を経費にできるか判断できます。
🏆 結論:プライベート併用なら「按分」して経費に
スマホ・ネット・固定電話などの通信費は、事業で使った分だけ経費にできます。仕事とプライベートで同じ回線を使っている場合は全額ではなく按分(あんぶん)が必要で、按分割合は使用時間・使用日数・データ通信量などの合理的な基準で決めます。割合そのものより、「なぜその割合にしたか」を説明できることが大切です。
通信費として経費にできるものの範囲
通信費とは、事業の連絡や情報のやり取りにかかった費用をまとめる勘定科目です。個人事業主・フリーランスの場合、毎月ほぼ確実に発生する経費でありながら、プライベートと混ざりやすいため按分の判断に迷う代表格でもあります。まずは、何が通信費に含まれるのかを整理しましょう。
通信費に含まれる主なもの
事業に使う通信関連の支出は、おおむね次のものが通信費に該当します。
- スマートフォン・携帯電話の利用料金(通話料・データ通信料)
- 自宅やオフィスのインターネット回線(光回線・モバイルWi-Fiなど)の利用料
- 固定電話・FAXの利用料
- 切手・はがき・レターパックなどの郵送費
- 宅配便・メール便などの配送料(荷造運賃で処理する場合もある)
- レンタルサーバー代・独自ドメイン代
- クラウドストレージや一部の通信系サブスクリプション
どこまでを通信費とし、どこから別科目にするかは事業者の判断で構いません。大切なのは毎年同じ基準で続けること(継続性)です。なお、何が経費になるかの全体像は経費にできるもの一覧でも勘定科目別に整理しています。通信費は、経費全体を体系的に押さえた経費の完全ガイドのなかでも、ほぼ全事業者に共通する基本科目です。
通信機器の本体代は通信費にならない
意外と間違えやすいのが、スマホやルーターなどの「機器本体」の購入代金です。これは通信費ではなく、金額に応じて消耗品費や工具器具備品(減価償却資産)で処理します。目安として、10万円未満であれば消耗品費として一括で経費にできます。10万円以上の端末は原則として資産計上のうえ減価償却が必要です。毎月の利用料(通信費)と、買い切りの本体代(消耗品費など)は分けて考えると整理しやすくなります。
💡 実務のポイント
通信費は「補助科目」を設定しておくと管理がぐっと楽になります。通信費の中に「スマホ代」「ネット回線」「サーバー・ドメイン」などの内訳を作っておけば、何にいくら使っているかが一目で分かり、税務署から内訳を聞かれたときもすぐ答えられます。
スマホ・携帯電話の按分方法【計算例】
仕事専用のスマホを別契約していれば、その利用料は全額が通信費になります。問題は、1台のスマホを仕事とプライベートの両方で使っているケースです。この場合は事業で使った割合だけを経費にする「家事按分」を行います。
🧮 シミュレーション
月額のスマホ利用料が16,000円、週5日を仕事に使っているケース。
按分率=5日 ÷ 7日 = 約71%
経費にできる額=16,000円 × 71% = 11,360円
年間では 11,360円 × 12か月 = 約136,320円が通信費(経費)になります。残りの29%(プライベート分)は経費にできません。
按分の3つの算定方法
スマホやネットの按分割合は、次のいずれかの合理的な基準で決めるのが一般的です。自分の使い方に一番近く、説明しやすい方法を選んでください。
| 算定方法 | 計算の考え方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 使用日数で按分 | 仕事をした日数 ÷ 全日数(例:週5日=約71%) | 平日に事業、休日はプライベートが中心の人 |
| 使用時間で按分 | 1日の事業使用時間 ÷ 起きている時間(例:8時間 ÷ 16時間=50%) | 時間で仕事と私用の線引きがしやすい人 |
| データ通信量で按分 | 事業用アプリ・通信のデータ量の割合 | 明細でデータ量を確認できる人 |
※いずれの方法でも、なぜその割合にしたかを説明できることが前提です。実態とかけ離れた高い割合は避けましょう。
インターネット回線・固定電話の按分
自宅の光回線やモバイルWi-Fiも、仕事とプライベートで共用しているなら按分が必要です。在宅で仕事をするフリーランスにとって、ネット回線は事業の生命線である一方、動画視聴やゲームなど私的利用も多い費目です。
インターネット回線の按分の考え方
在宅ワーク中心であれば、日中の稼働時間をもとに按分するのが分かりやすい方法です。例えば1日8時間を業務に使い、就寝時間を除く起床16時間のうち半分が仕事ならば、按分率は50%が一つの目安になります。家族と同居していて、家族はプライベートでしかネットを使わない場合は、その分も考慮して事業割合を低めに設定するのが自然です。
固定電話・FAXの按分
事業専用に引いた固定電話やFAXであれば全額が経費です。家庭兼用の固定電話を仕事にも使っている場合は、通話記録などをもとに事業利用分を按分します。実務では、固定電話を事業専用番号として分けてしまうほうが、按分の手間も税務上の説明もシンプルになります。
💡 実務のポイント
按分の手間と税務リスクを根本からなくしたいなら、仕事用の回線・端末を別契約してしまうのが一番です。少し固定費は増えますが、その分は全額経費にでき、按分の根拠を毎年考える必要もなくなります。事業規模が大きくなってきた人ほど検討する価値があります。
プライベート併用時の按分割合の決め方
「結局、何割にすればいいのか」が多くの方の最大の悩みです。法律で「通信費は○割まで」という上限は決まっていません。実態に応じて合理的に決めるのが原則です。どのくらいの割合が妥当か、判断の手がかりを整理します。
働き方別の按分割合の目安
あくまで目安ですが、働き方によって妥当とされやすい事業割合はおおよそ次のようになります。自分の実態に当てはめて、説明できる範囲で設定してください。
| 働き方・業種の例 | スマホの事業割合の目安 | ネット回線の事業割合の目安 |
|---|---|---|
| 在宅中心のWebライター・デザイナー | 50〜70% | 50〜70% |
| 外回りの多い営業・コンサル | 60〜80% | 30〜50% |
| 店舗を持つ小売・飲食 | 40〜60% | 店舗回線は全額・自宅分は按分 |
| 副業(会社員の兼業) | 10〜30% | 10〜30% |
※上記は一般的な傾向であり、絶対的な基準ではありません。実際の使用状況に基づいて設定し、根拠を記録してください。
副業の方は事業の比重が小さいぶん、通信費の事業割合も控えめにするのが自然です。逆に、ネットを使う仕事を本業として専業でやっている方は、高めの割合でも実態に合っていれば問題ありません。経費全体をどこまで攻めるかの考え方は経費はいくらまで計上できるかでも詳しく扱っています。
按分の根拠と記録の残し方
按分で最も重要なのは、割合の高さそのものではなく「なぜその割合にしたかを説明できること」です。家事関連費(事業とプライベートが混在する費用)は、業務に必要だった部分を明らかに区分できる場合に経費にできると定められています(所得税法施行令第96条)。区分の根拠が示せないと、経費計上の正当性を疑われかねません。
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按分割合の設定から仕訳・申告まで、面倒な確定申告は専門家に丸投げ。会計ソフトの入力から提出まで、すべて代行します。
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税務調査で按分割合を聞かれたときにすぐ示せるよう、次のような記録を残しておきましょう。一度メモにしておけば、翌年以降も同じ根拠を使い回せます。
- 1日(または1週間)の業務スケジュールと使用時間のメモ
- 週あたりの稼働日数が分かる業務記録
- 通信明細(事業利用分が分かるもの・データ量の記録)
- 按分率の計算過程を書いたメモ(「週5日稼働なので5/7=71%」など)
按分の根拠の作り方や、経費として認められるかどうかの判断軸は、経費の判断基準でさらに詳しく解説しています。あわせて確認しておくと、通信費以外の家事按分にも応用できます。
⚠️ 注意
「とりあえず全額経費」「みんな80%にしているから80%」といった根拠のない按分は危険です。実態とかけ離れた割合は税務調査で否認され、過少申告加算税や延滞税が上乗せされることがあります。少し控えめでも、説明できる割合にするのが結局は安全で得策です。
業種別の通信費の注意点
同じ通信費でも、業種によって主役になる費目や按分の考え方は変わります。代表的なパターンを挙げます。
在宅・オンライン中心の業種
Webライター、デザイナー、エンジニア、オンライン講師などは、ネット回線とクラウドサービスが事業の中心です。回線料・サーバー代・通信系サブスクの比重が大きく、事業割合も高めになりやすい一方、私的な動画視聴と混在しやすいため根拠の記録が特に重要です。
店舗・現場を持つ業種
飲食店や小売店、施工業などは、店舗・事務所に引いた回線は全額経費にしやすい反面、自宅兼用のスマホは按分が必要です。業種ごとの経費の考え方は業種別の確定申告ガイドでまとめているので、自分の業種に近いケースを確認してください。
通信費の仕訳と勘定科目の使い方
按分した通信費は、複式簿記で次のように記帳します。スマホ代10,000円が口座から引き落とされ、事業割合を50%とした例です。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 通信費 5,000円 | 普通預金 10,000円 | スマホ料金(事業50%) |
| 事業主貸 5,000円 | スマホ料金(私用50%) |
ポイントは、プライベート分を「事業主貸(じぎょうぬしかし)」という個人事業特有の科目で処理することです。これは事業のお金を生活費に回したことを表す科目で、経費にはなりません。会計ソフトを使えば按分機能で自動計算してくれるものも多く、最初に割合を登録しておけば毎月の手間は大きく減ります。
自分でやる vs 税理士に任せる
通信費の按分だけなら、自分で計算するのは十分可能です。ただ、通信費・家賃・水道光熱費・車両費など按分する費目が増えてくると、それぞれの根拠を整えるのは意外と手間がかかります。事業が拡大して売上や経費の項目が増えるほど、その負担は無視できなくなります。
| 項目 | 自分でやる | 税理士に任せる |
|---|---|---|
| 費用 | 会計ソフト代のみ | 49,800円〜 |
| 按分の根拠づくり | 自分で記録・計算 | 適正割合を提案してくれる |
| 税務調査リスク | 判断の自信が持ちにくい | 根拠を整えて低減できる |
| かかる時間 | 数日〜 | 明細を渡すだけ |
「経費の取りこぼしが怖い」「按分割合に自信がない」と感じる方は、一度プロに任せて適正なラインを見てもらうのも有効です。税理士に依頼する場合の費用対効果は節税を税理士に依頼すべきかで詳しく比較しています。
弊所の通信費・経費サポート実例
実際に確定申告ドットコムでご依頼いただいた、通信費を含む経費まわりのサポート実例を紹介します(守秘のため一部内容を変えています)。
実例1:年商480万円の在宅Webデザイナー(料金:年59,800円)
ネット回線とスマホをプライベートと共用していたため、全額経費にしてよいか不安だというご相談でした。1日の稼働時間と業務スケジュールをヒアリングし、回線60%・スマホ55%の按分を設定。根拠メモを一緒に作成したことで、本人が「これなら聞かれても説明できる」と納得して申告できました。
実例2:年商1,200万円の外回り営業コンサル(料金:年89,800円)
スマホでの顧客連絡が多い一方、自宅ネットは家族との共用でした。通信明細をもとにスマホは75%、ネットは40%で按分。あわせて車両費・交際費の按分も整理し、年間で十数万円分の経費の取りこぼしを防ぎつつ、根拠資料を一式そろえて税務調査にも備えました。
実例3:会社員の副業ライター(料金:年49,800円)
副業の規模が小さく「どこまで経費にしてよいか分からない」というご相談。事業の比重に合わせてスマホ・ネットとも事業割合20%に設定し、控えめでも確実に説明できる水準に。過度な経費計上を避けることで、本業の給与とあわせた申告でも安心できる内容に仕上げました。
よくある質問
まとめ
通信費は個人事業主のほぼ全員に関係する基本の経費です。仕事専用なら全額、共用なら按分というシンプルな原則を押さえ、自分の実態に合った割合を説明できる形で設定することが、安全で確実な経費計上につながります。按分割合の設定や根拠づくりに不安がある場合は、確定申告ドットコムが適正なラインの提案から仕訳・申告まで丸ごと代行します。
📋 この記事のポイント
- 通信費にはスマホ・ネット・固定電話・郵送費・サーバー代などが含まれる
- 本体代は通信費ではなく消耗品費や減価償却資産で処理する
- 仕事専用は全額、プライベート共用は按分が必要
- 按分は使用日数・使用時間・データ通信量のいずれか合理的な基準で決める
- 働き方・業種によって妥当な事業割合の目安は変わる
- 割合の高さより「根拠を説明できること」が最重要(施行令第96条)
- プライベート分は「事業主貸」で処理し、計算メモを残す
確定申告ドットコム
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確定申告を 49,800円〜 で丸投げできます。
大手監査法人出身の公認会計士・税理士が、適正な按分割合の提案から記帳・申告まで対応します。経費の取りこぼしも防ぎます。
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