大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告を年間100件以上代行している実務経験から、持ち家を事務所にする場合の減価償却や住宅ローンの扱いを具体的に解説します。
持ち家で開業する事業者に向けて、持ち家を事務所にする場合の経費を解説します。読めば、減価償却・固定資産税・住宅ローンの正しい扱いと、住宅ローン控除との関係がわかります。
🏆 結論:持ち家は「建物の減価償却・固定資産税・ローン利息」を事業割合だけ経費にできる
持ち家を事務所として使う場合、賃貸の家賃の代わりに、建物の減価償却費・固定資産税・火災保険料・住宅ローンの利息を、事業で使う割合(事業割合)だけ経費にできます。ただし、住宅ローンの元本返済は経費になりません(借金の返済であり費用ではないため)。また、事業割合を大きくしすぎると住宅ローン控除が使えなくなる場合があり、賃貸とは違う持ち家特有の判断が必要です。
持ち家を事務所にすると何が経費になる?
持ち家を事務所として使う場合、自宅にかかる費用の一部を事業の経費にできます。賃貸の場合は家賃を按分しますが、持ち家には家賃がない代わりに、別の費用が按分の対象になります。
持ち家で経費にできる主なものは、建物の減価償却費・固定資産税(都市計画税)・火災保険料・住宅ローンの利息です。これらを、事業で使う割合に応じて経費計上します。賃貸との違いは大きいので、混同しないよう注意しましょう。経費全体の考え方は経費の完全ガイドで体系的に解説しているので、まずそちらで基礎を押さえておくとスムーズです。
💡 実務のポイント:賃貸と持ち家で経費が違う
賃貸では家賃・礼金が経費になりますが、持ち家ではそれらが発生しません。代わりに建物の減価償却費という、賃貸にはない費用が経費になります。「持ち家だから家賃がなくて経費にできない」と思い込み、減価償却費を計上し忘れている方が実務では非常に多いです。持ち家ならではの経費を漏らさないことが節税のポイントです。
持ち家の事業按分の考え方と計算方法
持ち家の費用を経費にするには、まず事業割合(事業按分の割合)を求めます。最も一般的なのは、床面積で按分する方法です。
🧮 事業割合の計算例(床面積按分)
自宅全体の床面積80㎡のうち、事業専用に20㎡を使っている場合
事業割合 = 20㎡ ÷ 80㎡ = 25%
→ 持ち家にかかる各費用の25%を経費にできます。
事業割合は、床面積のほか、使用時間で按分する方法もあります。いずれの場合も、根拠を明確にして記録を残しておくことが重要です。事業割合を高くしすぎると税務調査で否認されるリスクがあるため、実態に合った合理的な割合にしましょう。経費にできるかどうかの線引きは経費の判断基準で詳しく解説しています。
建物の減価償却費の計算【持ち家特有】
持ち家を事務所にする場合の最大のポイントが、建物の減価償却費です。これは賃貸では発生しない、持ち家特有の経費です。建物の取得費を、耐用年数にわたって少しずつ経費にしていきます。
注意点として、減価償却の対象は建物だけで、土地は対象になりません。土地は使っても価値が減らないと考えられるためです。また、事業用として使う場合の耐用年数は、法定耐用年数(木造22年、鉄骨造、鉄筋コンクリート造47年など)をそのまま使います。個人事業主は定額法で計算します。
🧮 計算例:木造の自宅(建物2,200万円)の減価償却
建物取得価額2,200万円・木造(耐用年数22年・定額法償却率0.046)・事業割合25%
① 年間の減価償却費 = 2,200万円 × 0.046 = 101.2万円
② 経費になる額 = 101.2万円 × 25%(事業割合)= 約25.3万円
→ この約25.3万円を、毎年「減価償却費」として経費計上します。
⚠️ 中古・転用時は計算が複雑になる
新築当初は自宅として住み、後から一部を事務所に転用した場合は、それまで自宅だった期間の価値の減少分を差し引いた「未償却残高」をもとに計算します。この計算はやや複雑で、居住用の耐用年数(法定の1.5倍)を使う段階もあるため、判断を誤りやすい部分です。中古で購入した持ち家も同様に注意が必要です。不安な場合は税理士に確認することをおすすめします。
固定資産税・火災保険料の按分
固定資産税(および都市計画税)も、事業で使う割合に応じて経費にできます。毎年送られてくる納税通知書の税額に、事業割合を掛けて計算します。
たとえば、年間の固定資産税が12万円で事業割合が25%なら、12万円 × 25% = 3万円が経費になります。火災保険料・地震保険料も同様に、事業割合分を経費にできます(ただし地震保険料は、居住用部分が地震保険料控除の対象になるため、二重に使わないよう区分が必要です)。これらの計算根拠となる資料は必ず保存しておきましょう。経費にできるものの具体例は経費にできるもの一覧で確認できます。
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料金・サービスはこちらから →住宅ローン利息は経費・元本は経費にならない
住宅ローンを支払っている場合、その扱いには注意が必要です。経費にできるのは利息部分だけで、元本の返済は経費になりません。
これは、元本の返済が「借りたお金を返している」だけであり、費用ではないためです。一方、利息は資金を借りるためのコストなので、事業割合分を経費にできます。たとえば、年間のローン利息が30万円で事業割合が25%なら、30万円 × 25% = 7.5万円が経費になります。元本部分を経費にしてしまうミスが多いので、返済額のうち利息と元本を明確に分けて処理しましょう。
💡 実務のポイント:利息と元本の内訳を確認
毎月の返済額には、利息と元本の両方が含まれています。金融機関から届く返済予定表(償還予定表)を見れば、各回の利息と元本の内訳がわかります。返済初期は利息の割合が大きく、後半になるほど元本の割合が増えていきます。経費にできるのは利息部分だけなので、この内訳を必ず確認してください。
住宅ローン控除との関係【有利不利の判断】
持ち家を事務所にするとき、見落としてはいけないのが住宅ローン控除との関係です。事業割合を大きくすると、住宅ローン控除が使えなくなったり、減ったりする場合があります。
住宅ローン控除を受けるには、床面積の2分の1以上を居住用にしている必要があります。事業用の割合が半分を超えると、控除そのものが受けられません。また、居住用部分が2分の1以上であっても、事業用部分は控除の対象外となるため、事業割合が大きいほど控除額は減ります。
🧮 どちらが得か:経費 vs 住宅ローン控除
事業割合を上げると経費は増えますが、住宅ローン控除が減ります。一般的な目安として、事業割合が小さい(おおむね10%程度以下)場合は、住宅ローン控除を満額受けられる扱いがあり、経費計上を見送ったほうが有利なこともあります。控除期間中は、「経費にして節税できる額」と「減ってしまう控除額」を比較して判断するのが鉄則です。
住宅ローン控除は税額から直接差し引かれる(税額控除)ため、節税効果が大きい制度です。一方、経費は所得を減らす効果にとどまります。どちらが有利かはローン残高や所得によって変わるため、慎重な判断が必要です。判断に迷う場合は節税を税理士に依頼すべきかも参考にしてください。
業種別の事業割合の考え方
持ち家の事業割合は、業種や働き方によって妥当な水準が変わります。在宅で長時間働く業種ほど、事業割合を高く設定しやすくなります。
たとえば、自宅で常時作業するWebデザイナーやライターはPC作業用のスペースが中心となり、来客がある士業やサロンは応接・施術スペースの分も含められます。逆に、外回りが中心で自宅は事務処理のみという場合は、事業割合は低めになります。いずれも実態に即した割合にすることが大切です。自分の業種での経費の考え方は業種別の確定申告ガイドで確認しておくとよいでしょう。どこまで経費に計上できるかは経費はいくらまで計上できるかもあわせてご覧ください。
持ち家経費でよくある失敗
持ち家の経費処理は、賃貸より複雑なため、ミスが起きやすい論点です。実務でよく見かける失敗を挙げます。
- 住宅ローンの元本まで経費にしてしまう(利息のみが正解)
- 土地まで減価償却の対象にしてしまう(建物のみが対象)
- 建物の減価償却費を計上し忘れる(持ち家最大の経費を見逃す)
- 事業割合を高く設定しすぎて、税務調査で否認される
- 住宅ローン控除との有利不利を考えずに経費計上してしまう
これらはいずれも、知らないことで損をしたり、リスクを抱えたりするケースです。持ち家特有の論点は専門知識が必要なので、不安があれば早めに専門家へ相談しましょう。
自分でやる vs 税理士に任せる
持ち家の減価償却や住宅ローン控除との調整は、賃貸の家賃按分より格段に難しい論点です。判断を誤ると、節税機会を逃したり、追徴課税のリスクを負ったりします。判断の目安を整理します。
| 項目 | 自分でやる | 税理士に任せる |
|---|---|---|
| 費用 | 会計ソフト代のみ | 49,800円〜 |
| 減価償却の計算 | 複雑でミスしやすい | 正確に計算 |
| ローン控除との調整 | 有利不利の判断が難しい | 最適な選択を提案 |
持ち家で開業して間もない、減価償却の計算に自信がない、住宅ローン控除との兼ね合いで迷う、という方は、税理士への依頼を検討する価値があります。費用対効果は前述の節税記事もあわせてご覧ください。
弊所の持ち家経費サポート実例
確定申告ドットコムでサポートした、持ち家の経費処理まわりの実例を紹介します(守秘のため一部内容を変えています)。
実例1:年商1,200万円の在宅ライター(料金:年79,800円)
持ち家なのに建物の減価償却費を計上しておらず、経費を取りこぼしていたケース。建物2,000万円・木造・事業割合20%で減価償却費を計算し、毎年約18万円を新たに経費計上。住宅ローン利息の按分も加え、適正に所得を圧縮しました。
実例2:年商900万円の自宅サロン経営者(料金:年59,800円)
住宅ローンの元本まで経費に入れていたケース。償還予定表をもとに利息と元本を分け、利息のみを事業割合で按分するよう修正。固定資産税・火災保険も正しく按分し、税務調査でも説明できる処理に整えました。
実例3:年商1,500万円の税理士兼コンサルタント(料金:年99,800円)
事業割合を高く設定して住宅ローン控除が大幅に減っていたケース。控除期間中は事業割合を実態の範囲で抑え、控除を優先する形に調整。控除期間と経費計上のバランスを最適化し、トータルの手取りを改善しました。
よくある質問
まとめ
持ち家を事務所にする場合は、建物の減価償却費・固定資産税・火災保険料・住宅ローンの利息を、事業割合に応じて経費にできます。減価償却の対象は建物のみで土地は対象外、住宅ローンは利息のみが経費で元本は対象外です。さらに、事業割合を大きくすると住宅ローン控除が減るため、控除期間中は有利不利の比較が欠かせません。賃貸とは違う持ち家特有の論点が多く、計算も複雑です。持ち家の経費処理に迷ったときは、確定申告ドットコムが減価償却の計算から住宅ローン控除との調整、記帳・申告まで丸ごとサポートします。
📋 この記事のポイント
- 持ち家は減価償却費・固定資産税・火災保険・ローン利息を按分計上
- 建物の減価償却は持ち家特有の経費。計上忘れに注意
- 減価償却の対象は建物のみ。土地は対象外
- 住宅ローンは利息のみ経費。元本は経費にならない
- 固定資産税・火災保険も事業割合で按分できる
- 事業割合を上げると住宅ローン控除が減る(要・有利不利の判断)
- 床面積の2分の1以上が居住用でないと控除は受けられない
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