大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告を年間100件以上代行している実務経験から、混同しやすい保険料の経費と控除の区分を具体的に解説します。
保険に加入する個人事業主に向けて、どの保険料が経費になり、どれが所得控除になるかを解説します。読めば、事業用保険と私的保険の区分を正しく判断できます。
🏆 結論:事業用の損害保険は経費、生命保険は所得控除
事業に関わる火災保険や賠償責任保険などの損害保険料は、経費にできます。一方、個人事業主本人の生命保険は経費にならず、生命保険料控除という所得控除で扱います。同じ「保険料」でも、経費になるか控除になるか、どちらにもならないかが分かれます。この区分を間違えないことが正しい申告の第一歩です。
保険料は経費になる?基本の考え方
保険料が経費になるかどうかは、「その保険が事業のためのものか、個人(プライベート)のためのものか」で決まります。事業の損害やリスクに備える保険は経費、本人や家族の生活に備える保険は経費にならない、というのが基本の考え方です。
個人事業主がつまずきやすいのは、法人と扱いが違う点です。法人では役員の生命保険を一定の範囲で損金にできる場合がありますが、個人事業主本人の生命保険は事業の経費にできません。まずはこの「事業用か私的か」という軸を押さえましょう。事業用保険の経費計上ができるかどうかは、事業との関連性で判断します。保険料は経費全体の中でも区分を間違えやすい科目なので、経費の全体像を押さえた経費の完全ガイドとあわせて確認すると整理しやすくなります。経費に計上できるかどうかの判断軸は経費の判断基準でも解説しています。
経費・控除・どちらでもない保険の区分【一覧表】
保険料は大きく3つに分かれます。事業用と私的保険の区分を一覧で整理しました。まずはこの表で自分の保険がどこに当たるかを確認してください。
| 扱い | 主な保険 |
|---|---|
| 経費になる(損害保険料など) | 事務所・店舗の火災保険、賠償責任保険、事業用車の自動車保険、事業用の動産総合保険 |
| 所得控除になる | 生命保険、医療保険、個人年金保険、地震保険(自宅分) |
| どちらにもならない | 本人・家族の私的な掛け捨て保険のうち控除対象外のもの |
※国民健康保険料・国民年金・介護保険料は経費ではなく「社会保険料控除」として所得控除になります。
経費になる保険は所得金額を直接減らし、所得控除になる保険は控除の枠内(生命保険料控除は最大12万円など)で税負担を軽減します。どちらも節税にはなりますが、効き方と上限が違う点を理解しておきましょう。
事業用の損害保険・賠償責任保険
事業のリスクに備える損害保険・賠償責任保険は、保険料を全額経費にできます。代表的なものを挙げます。
- 事務所・店舗・倉庫の火災保険・地震保険(事業用部分)
- 賠償責任保険(PL保険、施設賠償、専門職賠償責任保険など)
- 事業用設備・在庫の動産総合保険
- 休業補償・事業中断保険
- 取引信用保険
例えば、店舗を持つ事業者の火災保険や、専門サービス業の賠償責任保険は、事業を守るための保険なので全額経費にできます。これらは「損害保険料」または「保険料」という勘定科目で処理します。賠償責任保険は近年フリーランスでも加入が増えており、事業に直結するため経費性も明確です。
💡 実務のポイント
数年分の保険料を一括前払いした場合、原則として当年分のみが経費になり、翌年以降分は前払費用として繰り延べます。ただし、1年以内の前払いで毎年継続する場合は「短期前払費用の特例」で支払時に全額経費にできることもあります。複数年契約の火災保険などは処理に注意しましょう。
生命保険は経費ではなく控除
個人事業主が特に間違えやすいのが生命保険です。本人や家族のための生命保険・医療保険・個人年金保険は、事業の経費にはできません。これらは「生命保険料控除」という所得控除で扱い、確定申告で所得から差し引きます。
生命保険料控除には上限があり、新制度では一般・介護医療・個人年金の3区分で所得税は最大12万円までです。経費のように支払った全額が所得を減らすわけではない点に注意が必要です。「節税のために生命保険に入る」という話をよく聞きますが、個人事業主の場合、控除額には上限があるため、共済やiDeCoなど全額が所得控除になる制度のほうが節税効果は大きいのが実情です。生命保険料控除の詳しい仕組みは、生命保険料控除の専用解説もあわせて確認するとよいでしょう。
確定申告ドットコム
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経費になる保険と控除になる保険の区分から記帳・申告まで、面倒な確定申告は専門家に丸投げ。会計ソフトの入力から提出まで、すべて代行します。
料金・サービスはこちらから →車両保険の処理と按分
事業で使う車の自動車保険(任意保険)や自賠責保険は、事業割合に応じて経費にできます。事業専用の車なら全額、プライベートと兼用なら事業で使う割合だけを按分します。
按分の割合は、車の使用実態(走行距離や使用日数)をもとに決めます。例えば、走行距離の7割が事業利用なら、自動車保険料の7割を経費にできます。車両保険は車両費に含めて処理する方法と、損害保険料で処理する方法があり、どちらでも構いませんが毎年同じ科目で続けましょう。車関連の経費全般は走行距離などで按分するのが基本です。
按分が必要なケース
自宅兼用や私用と兼ねる保険は、按分が必要なケースになります。代表的な例を整理します。
| 保険 | 按分の考え方 |
|---|---|
| 自宅兼事務所の火災保険 | 事業使用の床面積割合で按分 |
| 事業兼用車の自動車保険 | 走行距離・使用日数の割合で按分 |
| 自宅の地震保険 | 事業部分は経費、居住部分は地震保険料控除 |
自宅兼事務所の火災保険は、事業で使う部分の保険料だけを経費にできます。按分率の決め方は家賃や水道光熱費と同じ考え方なので、按分全般の詳しい解説は経費はいくらまで計上できるかもあわせて確認してください。按分の根拠(床面積図や走行距離記録)を残しておくことが大切です。
保険料の仕訳と勘定科目
仕訳の具体例を示します。事業用の賠償責任保険料24,000円を口座から支払った例です。
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 損害保険料 24,000円 | 普通預金 24,000円 | 賠償責任保険 年額 |
勘定科目は「損害保険料」または「保険料」を使います。自宅兼用の火災保険など按分する場合は、事業割合分を損害保険料、残りを事業主貸で処理します。生命保険料は経費の仕訳をせず、確定申告書で生命保険料控除として記載します。経費にできる保険か控除になる保険かを取り違えると申告内容が変わるため、加入時に整理しておきましょう。何が経費になるかの全体像は経費にできるもの一覧でも勘定科目別に確認できます。
自分でやる vs 税理士に任せる
保険料の仕訳自体は簡単ですが、「経費か控除か」「按分が必要か」「前払いの繰延処理」といった判断は、知識がないと迷いがちです。複数の保険に加入している方や、自宅兼用・車兼用がある方ほど、プロに整えてもらう価値があります。業種によって必要な保険も異なるため、業種別の確定申告ガイドもあわせて確認すると判断しやすくなります。
| 項目 | 自分でやる | 税理士に任せる |
|---|---|---|
| 費用 | 会計ソフト代のみ | 49,800円〜 |
| 経費・控除の区分 | 取り違えやすい | 正しく区分してくれる |
| 按分・前払処理 | 判断が難しい | 適切に処理してくれる |
保険料の処理に不安がある方は、一度プロに見てもらうと安心です。税理士に依頼する費用対効果は節税を税理士に依頼すべきかで詳しく比較しています。
弊所の保険料・経費サポート実例
確定申告ドットコムでサポートした、保険料まわりの実例を紹介します(守秘のため一部内容を変えています)。
実例1:年商800万円のフリーランスエンジニア(料金:年69,800円)
生命保険料を事業の経費にしていたケース。生命保険は経費ではなく生命保険料控除であることを案内し、申告内容を修正。あわせて加入していた賠償責任保険を損害保険料として正しく計上し、適正な申告に整えました。
実例2:年商1,500万円の飲食店(料金:年99,800円)
店舗の火災保険を5年分一括で前払いし、初年度に全額経費にしようとしていたケース。前払費用として繰り延べる処理に変更し、各年に按分。賠償責任保険・施設賠償も整理し、税務調査でも説明できる形にしました。
実例3:年商600万円の訪問サービス業(料金:年59,800円)
事業兼用の車の自動車保険の按分に迷っていたご相談。走行距離をもとに事業割合70%を設定し、保険料を按分。自宅兼事務所の火災保険も床面積で按分し、経費と控除を正しく区分しました。
よくある質問
まとめ
保険料は、事業用の損害保険・賠償責任保険なら経費、生命保険・医療保険なら所得控除、というように扱いが分かれます。最も間違えやすいのは生命保険で、個人事業主本人の分は経費にできません。自宅兼用の火災保険や事業兼用車の自動車保険は按分が必要です。経費か控除かの区分を正しく判断することが、適正な申告につながります。判断に迷う方は、確定申告ドットコムが保険料の区分から記帳・申告まで丸ごと代行します。
📋 この記事のポイント
- 事業用の損害保険・賠償責任保険は全額経費にできる
- 個人事業主本人の生命保険は経費でなく所得控除
- 国民健康保険・国民年金は社会保険料控除(経費ではない)
- 事業兼用車の自動車保険は走行距離などで按分
- 自宅兼事務所の火災保険は床面積割合で按分
- 数年分の前払いは原則繰り延べ(短期前払費用の特例あり)
- 経費か控除かの区分を取り違えないことが大切
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