現金主義と発生主義|経費の計上タイミング

確定申告ドットコム|公認会計士・税理士監修
大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。個人事業主・フリーランスの確定申告を年間100件以上代行している実務経験から、判断に迷いやすい経費の計上タイミングを具体的に解説します。
📋 税理士監修 💼 個人事業主向け

経費をいつ計上すべきか迷う方に向けて、発生主義と現金主義の違い・未払費用や前払費用の処理・年をまたぐ経費の扱いを解説します。読めば、計上時期の判断ができます。

🏆 結論:経費は「支払った時」ではなく「発生した時」に計上する

経費の計上タイミングは、原則として発生主義で判断します。支払日ではなく、サービスを受けたり債務が確定したりした時点で計上するのがルールです。年末年始をまたぐ取引は、支払いが翌年でも発生した年の経費になるため、計上する年度を間違えないことが大切です。青色申告の65万円控除も発生主義が前提です。

経費はいつ計上する?発生主義が原則

「経費はお金を払った時に計上する」と思っている方が多いのですが、これは正確ではありません。原則は発生主義といって、費用が発生した時点(サービスを受けた、商品を受け取った、債務が確定した時点)で計上します。実際にお金を払うのが翌月や翌年でも、発生した年の経費になります。

個人事業主が複式簿記で記帳し、青色申告特別控除の65万円(または55万円)を受けるには、この発生主義での記帳が前提です。経費の計上タイミングを正しく理解することは、正確な所得計算と適正な節税の土台になります。経費全体の考え方は経費の完全ガイドで体系的に扱っているので、あわせて押さえておきましょう。

発生主義と現金主義の違い【比較表】

経費の計上方法には、発生主義と現金主義の2つがあります。違いを比較表で整理します。

項目 発生主義 現金主義
計上の時点取引が発生した時お金が動いた時
原則・例外原則例外(届出が必要)
青色65万円控除適用できる適用できない(10万円控除のみ)
記帳の手間やや複雑シンプル

現金主義は、前々年の所得が300万円以下で、事前に届出をした青色申告者だけが選べる例外的な方法です。記帳は楽になりますが、青色申告特別控除が10万円に下がるため、節税面では発生主義のほうが有利です。多くの個人事業主は発生主義で記帳しています。青色申告の控除については内部リンク先でも詳しく扱っています。

経費の計上タイミングの基本ルール

発生主義での経費の計上タイミングは、「その費用がいつ発生したか(債務が確定したか)」で判断します。判断のポイントは次の3つです。

  • サービスや商品の提供を受けたか(役務の提供完了・引渡し)
  • 支払うべき金額が確定しているか(債務の確定)
  • その年に対応する費用か(期間対応)

例えば、12月に受けたコンサルティングの報酬は、請求や支払いが翌年1月でも、サービスを受けた12月の経費になります。逆に、翌年1月から始まるサービスの料金を12月に前払いしても、原則として12月の経費にはなりません。経費に計上できるかどうかの判断軸は経費の判断基準でも解説しています。

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未払費用・前払費用の処理

発生主義では、お金の動きと費用の発生年がずれる場合に「未払費用」と「前払費用」という調整を行います。

未払費用(発生済み・未払い)

その年にサービスを受けたが、まだ支払っていない費用です。発生主義では、未払いでも発生した年の経費にします。例えば12月分の電気代を翌年1月に払う場合、12月の経費として「未払費用」で計上します。

前払費用(先払い・未発生)

翌年以降のサービス分を先に払った費用です。前払いした分は、まだサービスを受けていないので当年の経費にできず、「前払費用」という資産にして、サービスを受ける年の経費にします。ただし、1年以内のサービスで毎年継続して支払う場合は「短期前払費用の特例」で支払時に全額経費にできることもあります。未払費用・前払費用の処理は、決算で利益を正しく計算するための調整です。

年をまたぐ経費の具体例【期ズレに注意】

最も間違えやすいのが、年末年始をまたぐ取引です。計上する年度を間違える「期ズレ」は、税務調査で指摘されやすいポイントです。具体例で確認しましょう。

ケース どの年の経費か
12月に受けた外注作業、支払いは翌年1月当年(12月)の経費(未払費用)
12月分の家賃を翌年1月に支払い当年(12月)の経費(未払費用)
翌年1月分の家賃を12月に前払い翌年の経費(前払費用)※特例あり
12月に届いた商品、請求書が翌年1月当年(12月)の経費(未払費用)

ポイントは「支払日ではなく、いつ発生したか」です。期ズレの注意点として、利益を翌年に先送りしたいからといって、本来当年の経費を翌年に回したり、その逆をしたりするのは認められません。発生した年に正しく計上することが、税務調査でも問われます。

クレジットカード払いの計上タイミング

クレジットカードで経費を払った場合、計上タイミングは「カードの引き落とし日」ではなく「カードを利用した日(購入日)」です。12月にカードで購入し、引き落としが翌年2月でも、利用した12月の経費になります。

仕訳では、利用日に「未払金」として経費を計上し、引き落とし日に未払金を消し込みます。カード明細は引き落とし日基準で並ぶことが多いため、年末年始の取引は利用日を確認して正しい年度に計上しましょう。経費全体をどこまで攻めるかの考え方は経費はいくらまで計上できるかもあわせて参考にしてください。

計上タイミングの仕訳例

未払費用の仕訳例を示します。12月分の電気代1万円が翌年1月に引き落とされる場合です。

場面 借方 貸方
12月末(発生時)水道光熱費 10,000円未払費用 10,000円
翌年1月(支払時)未払費用 10,000円普通預金 10,000円

このように、発生時に経費と未払費用を計上し、支払時に未払費用を消します。会計ソフトを使えば、これらの調整も比較的簡単にできます。何が経費になるかの全体像は経費にできるもの一覧でも確認できます。

自分でやる vs 税理士に任せる

日々の記帳は会計ソフトでできますが、決算時の未払費用・前払費用の調整や、年をまたぐ取引の期ズレ判断は、知識がないと間違えやすい領域です。取引が多い方や年末に取引が集中する方ほど、プロに整えてもらう価値があります。業種によって発生する経費の種類も違うため、業種別の確定申告ガイドもあわせて確認すると判断しやすくなります。

項目 自分でやる 税理士に任せる
費用会計ソフト代のみ49,800円〜
未払・前払の調整決算で迷いやすい正しく処理してくれる
期ズレリスク指摘されやすい適正な年度に計上

計上タイミングや決算の調整に不安がある方は、一度プロに見てもらうと安心です。税理士に依頼する費用対効果は節税を税理士に依頼すべきかで詳しく比較しています。

弊所の経費計上サポート実例

確定申告ドットコムでサポートした、経費の計上タイミングまわりの実例を紹介します(守秘のため一部内容を変えています)。

実例1:年商1,300万円のフリーランスコンサル(料金:年89,800円)

12月に納品した案件の外注費を、支払った翌年に計上していたケース。発生主義に基づき当年の未払費用として計上し直し、利益を正しく計算。期ズレを解消し、税務調査でも説明できる帳簿に整えました。

実例2:年商800万円のネットショップ運営者(料金:年69,800円)

クレジットカードの経費を引き落とし日で計上していたケース。利用日基準に修正し、年末年始の取引を正しい年度に振り分け。カード明細と帳簿のズレを解消し、正確な申告にしました。

実例3:年商600万円のデザイナー(料金:年59,800円)

翌年分のサブスク料金を12月に前払いし、全額を当年経費にしていたケース。前払費用として翌年に振り替える処理に修正。短期前払費用の特例の要件も確認し、適正な計上タイミングに整えました。

よくある質問

経費は支払った時に計上するのですか?
原則は発生主義で、支払日ではなくサービスを受けた時・債務が確定した時に計上します。支払いが翌年でも、発生した年の経費になります。
現金主義は選べますか?
前々年の所得が300万円以下で、事前に届出をした青色申告者だけが選べます。ただし青色申告特別控除が10万円に下がるため、節税面では発生主義が有利です。
12月に受けたサービスの請求が翌年の場合は?
サービスを受けた12月の経費になります。未払費用として当年に計上し、翌年支払った時に未払費用を消し込みます。
翌年分を前払いしたら当年の経費になりますか?
原則なりません。前払費用としていったん資産にし、サービスを受ける翌年の経費にします。1年以内のサービスで毎年継続するものは、短期前払費用の特例で支払時に全額経費にできる場合があります。
クレジットカード払いはいつの経費ですか?
引き落とし日ではなく、カードを利用した日(購入日)の経費です。12月に利用して翌年2月引き落としなら、12月の経費になります。
利益を減らすため経費を翌年に回してもいいですか?
できません。経費は発生した年に計上するルールです。本来当年の経費を翌年に回す(またはその逆)と期ズレとして税務調査で否認されます。
期ズレを指摘されるとどうなりますか?
計上年度を正しく直す修正が必要になり、追徴課税や加算税の対象になることがあります。発生した年に正しく計上しておくことが大切です。
未払費用と未払金の違いは何ですか?
未払費用は継続的なサービス(家賃・電気代など)の未払分、未払金は単発の取引(商品購入・外注費など)の未払分に使うのが一般的です。どちらも発生主義での計上に使います。

まとめ

経費の計上タイミングは、支払った時ではなく発生した時という発生主義が原則です。年末年始をまたぐ取引は、支払いが翌年でも発生した年の経費になり、クレジットカードは利用日基準で計上します。計上年度を間違える期ズレは税務調査で指摘されやすいため、発生した年に正しく計上することが大切です。決算の調整や期ズレの判断に迷う方は、確定申告ドットコムが計上タイミングの調整から記帳・申告まで丸ごと代行します。

📋 この記事のポイント

  • 経費は発生主義(発生した時に計上)が原則
  • 現金主義は届出した青色申告者の例外(控除10万円のみ)
  • 未払費用は発生済み・未払いで当年の経費
  • 前払費用は先払い分で翌年の経費(短期前払費用の特例あり)
  • 年をまたぐ取引は支払日でなく発生日で判断
  • クレジットカードは利用日基準で計上
  • 計上年度を誤る期ズレは税務調査で指摘されやすい

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