大手監査法人出身の公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)が監修。インボイス登録後に取りやめを検討する個人事業主・法人を年間数十件サポートする立場から、「2年縛り」の落とし穴を踏まえて戻るタイミングを解説します。
インボイス登録を取りやめて免税事業者に戻りたい方に向けて、手続きと2年縛りの落とし穴を解説します。この記事を読めば、いつまでに何の届出を出せばよいか、本当に来年から免税に戻れるかを正しく判断できます。
🏆 結論:翌年1月1日から戻るなら前年12月17日まで、ただし2年縛りに注意
インボイス登録の取りやめには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。個人事業主が翌年1月1日から免税に戻りたい場合、前年12月17日(翌期初日から15日前)までの提出が必要です。さらに重要な落とし穴として、登録の経緯によっては「2年縛り」で取消届を出しても2年間は課税事業者のままになることがあります。経過措置で登録した場合は2年縛りなし、課税事業者選択届出書を出してから登録した場合は別途「不適用届出書」も必要、と登録の入り口によって出口の手続きが変わります。
インボイス登録の取りやめとは|何が止まるのか
インボイス登録の取りやめとは、適格請求書発行事業者としての登録を解除する手続きです。取消の効力が発生すると、それ以降に発行する請求書はインボイスではなくなり、登録番号も無効になります。インボイス制度全体の位置づけは「フリーランスのインボイス完全ガイド」で解説しています。
取りやめると何が変わるか
- 登録番号が無効になり、適格請求書を発行できなくなる
- 取引先(買い手側)はあなたへの支払いから仕入税額控除を満額受けられなくなる
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として免税事業者に戻れる
- ただし「2年縛り」に該当すると、取消届を出しても課税事業者のままになる
取りやめ手続きの全体の流れ【4ステップ】
取りやめは、次の4ステップで進めます。
- 取りやめる理由と影響を確認する(取引先への影響・自社の納税負担)
- 「2年縛り」に該当するかを判定する
- 戻りたい時期を決め、提出期限を逆算する(翌期初日から15日前)
- 「登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する(e-Taxまたは書面)
取消届の提出先・様式は、登録時と同じく国税庁の管轄インボイス登録センターまたはe-Taxです。手続き自体は登録時と同様、手数料はかかりません。登録時の手順は「インボイス登録番号の取得方法」で解説しています。
届出書の提出期限【15日前ルール】
取りやめ手続きで最も重要なのが、この提出期限です。タイミングを1日でも逃すと、免税に戻れる時期が1年遅れます。
📢 翌課税期間の初日から起算して15日前までに提出
登録の取消しの効力は、届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間の初日から発生します。ただし、その翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出する必要があります。これを過ぎると、効力発生は翌々課税期間の初日まで延びます。
個人事業主のケース
個人事業主は課税期間が暦年(1月1日〜12月31日)なので、翌年1月1日から免税に戻るには前年12月17日(1月1日の15日前)までに提出する必要があります。年末ぎりぎりに駆け込むと間に合いません。
| 提出時期 | 取消の効力発生日 |
|---|---|
| 前年12月17日まで | 翌年1月1日 |
| 前年12月18日以降 | 翌々年1月1日(1年遅れる) |
※法人は事業年度が課税期間。決算月の翌月初日から15日前を逆算してください。
⚠️ 12月17日を1日でも過ぎたら来年は課税事業者のまま
弊所のお客様でも「12月20日に出した」「年末休みに気づいた」というケースで、効力発生が1年遅れた事例があります。提出は早めに済ませてください。e-Taxなら受付日時のログが残るため安心です。
2年縛りの落とし穴|届出を出しても戻れないケース
取消届を期限内に出しても、「2年縛り」のルールに該当すると、その期間は免税事業者に戻れません。ここが取りやめで最大の落とし穴です。
2年縛りの基本ルール
原則として、登録日の属する課税期間の翌課税期間から、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となり、納税義務が続きます。
🧮 2年縛りが「適用されない」ケース
令和5年10月1日を含む課税期間中に経過措置で登録した事業者は、2年縛りの対象外です。つまりインボイス制度開始時に同時登録した個人事業主の多くは、取消届を期限内に出せば翌期から免税に戻れます。一方、令和5年10月2日以降に登録した方は2年縛りの対象になりやすいので、登録日と照らし合わせて確認が必要です。
判定のチェックポイント
- 登録日が令和5年10月1日を含む課税期間中か → Yesなら2年縛りなし
- 令和5年10月2日以降に登録したか → Yesなら2年縛りの可能性あり
- 課税事業者選択届出書を出してから登録したか → Yesなら別途「課税事業者選択不適用届出書」が必要
自分が2年縛りに該当するかの判定に迷う場合は、登録通知書の登録日を確認のうえ税理士に相談すると確実です。登録すべきかの初期判断は「インボイス登録すべきか判断する方法」も参考になります。
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料金・サービスはこちらから →課税事業者選択届出書を出した人の追加手続き
インボイス登録のために「課税事業者選択届出書」を提出していた場合、取消届だけでは免税に戻れません。「課税事業者選択不適用届出書」も別途必要です。
| 登録の入り口 | 取りやめに必要な届出 |
|---|---|
| 経過措置で登録(令和5年10月1日を含む期) | 登録の取消届のみ |
| 経過措置で登録(令和5年10月2日以降) | 登録の取消届(2年縛りに留意) |
| 課税事業者選択届出書を出して登録 | 登録の取消届 + 課税事業者選択不適用届出書 |
※不適用届出書は「翌課税期間の初日の前日まで」に提出します。取消届とは別の書類なので、両方が必要なケースは出し忘れに注意してください。
取りやめのデメリットと事前に考えるべきこと
免税に戻ること自体にもデメリットがあります。手続きを進める前に、影響を整理しましょう。
取引先への影響
取引先(課税事業者)は、あなたへの支払いから経過措置の範囲でしか仕入税額控除を受けられなくなります。経過措置の控除割合は段階的に下がっていくため、取引先から登録継続を依頼される可能性があります。
2割特例が使えなくなる
免税に戻れば消費税の納税は不要になりますが、2割特例という有利な選択肢も使えなくなります。今後の売上見通しによっては、登録継続のほうが結果的に得になることもあります。2割特例の有利さは「インボイス2割特例完全ガイド」で確認できます。
再登録のハードル
一度取りやめても、再度登録することは可能です。ただし手続きは新規登録と同じで、通知までに1〜2か月かかります。取引開始日に間に合わせたい場合は再登録のタイムラグも踏まえて判断してください。業種ごとに取引先のインボイス要請度合いは異なります。業種別の事情は「業種別の確定申告ガイド」も参考になります。
確定申告ドットコムのサポート実例
弊所では、取りやめの可否判定から届出代行・代わりの方式選択まで一貫してサポートしています。実際の対応例をご紹介します。
実例1:年商420万円のフリーランスデザイナー(料金:年49,800円)
取引先がすべて個人客に切り替わり、インボイス不要となったケース。令和5年10月1日同時登録だったため2年縛りなしと判定し、12月17日までに取消届を提出。翌年1月から免税事業者として無事に戻れました。
実例2:年商780万円のフリーランス講師(料金:年69,800円)
取りやめを希望したものの、令和6年4月登録のため2年縛りの対象でした。取消届を出しても2年間は課税事業者のままになることを共有し、その間は2割特例で納税負担を抑える方針に変更。誤った期待で動かずに済みました。
実例3:年商550万円のEC事業者(料金:年69,800円)
課税事業者選択届出書を出してから登録したケース。取消届のみでは免税に戻れないため、課税事業者選択不適用届出書もセットで提出。両方の届出を漏れなく行い、翌期から完全に免税に戻ることができました。
よくある質問
まとめ:12月17日までの提出と2年縛りの確認が必須
インボイス登録の取りやめは、個人事業主なら前年12月17日までに「登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する必要があります。提出が1日でも遅れると、戻れる時期が1年延びます。さらに、令和5年10月2日以降に登録した方は2年縛りの対象になることがあり、課税事業者選択届出書を出していた方は別途不適用届出書も必要です。判定や届出の出し忘れで損をしないために、迷ったら「消費税の申告は税理士に依頼すべき?」もあわせて確認し、専門家のチェックを受けるのが安全です。
📋 この記事のポイント
- 取りやめには「登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する
- 個人事業主は翌年1月1日から戻るなら前年12月17日が期限
- 期限を1日でも過ぎると効力発生が1年遅れる
- 令和5年10月1日を含む期に登録した人は2年縛りなし
- 令和5年10月2日以降の登録は2年縛りの対象になることがある
- 課税事業者選択届出書を出していた場合は不適用届出書も必要
- 取りやめ後は2割特例も使えなくなるため、影響を比較してから判断
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