フリーランスの確定申告とは?会社員との違い
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得(売上 − 経費)を計算し、所得税額を確定させて税務署に申告・納税する手続きです。
会社員は勤務先が年末調整で所得税の精算を代行してくれますが、フリーランス(個人事業主)は自分で計算・申告・納税のすべてを行う必要があります。面倒に感じるかもしれませんが、確定申告は「節税の最大のチャンス」でもあります。経費の計上、青色申告特別控除の適用、各種所得控除の活用など、会社員にはできない節税手段がフリーランスには数多く用意されています。
確定申告のやり方を初めての人向けに解説|5ステップで完了確定申告が必要な人・不要な人の判断基準
フリーランスは原則として毎年確定申告が必要ですが、一部のケースでは申告が不要になります。以下のフローチャートで自分の状況を確認しましょう。
※2025年分から。2024年分以前は48万円
確定申告が「必要」なケース
| ケース | 判断基準 |
|---|---|
| 事業所得が基礎控除を超える | 所得95万円超(2025年分〜)で申告義務あり |
| 源泉徴収されている | 源泉税の還付を受けるには確定申告(還付申告)が必要 |
| 青色申告の特別控除を受けたい | 65万円控除にはe-Tax申告+複式簿記が必須 |
| 赤字を翌年に繰り越したい | 青色申告なら最長3年間の損失繰越が可能 |
| 住宅ローン控除を受けたい | 初年度は確定申告が必須(2年目以降は年末調整可) |
| 医療費控除を受けたい | 年間医療費が10万円超(所得200万円未満は所得の5%超) |
確定申告が「不要」でも申告した方がいいケース
所得が95万円以下でも、報酬から源泉徴収(10.21%)が引かれている場合は、確定申告をすると源泉税が全額還付される可能性があります。例えば、年間売上100万円・経費20万円で所得80万円のWebライターの場合、源泉徴収額は約10万2,100円。確定申告すれば全額戻ってきます。
「所得が少ないから申告しなくていい」と放置している方が実務でよくいますが、源泉徴収されているなら申告しないと損です。また、赤字でも申告しておけば翌年以降の黒字と相殺できます。フリーランスは「毎年必ず申告する」を基本にしてください。
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。住民税には「20万円以下なら申告不要」というルールがありません。お住まいの市区町村に住民税の申告をするか、確定申告をすれば自動的に住民税にも反映されます。
青色申告と白色申告の違い|フリーランスは青色一択
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、フリーランスなら青色申告を選ばない理由はありません。2014年から白色申告でも帳簿の作成・保存が義務化されたため、「白色のほうが楽」というメリットはほぼなくなっています。
特別控除 最大65万円
赤字の繰越 3年間
専従者給与 全額経費
少額減価償却 30万円未満OK
帳簿 複式簿記
特別控除 なし
赤字の繰越 不可
専従者控除 最大86万円
少額減価償却 10万円未満のみ
帳簿 単式簿記
年間 約19.5万円の節税(所得税+住民税+国保)
青色申告の65万円控除を受けるには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 複式簿記で記帳 | 会計ソフトを使えば自動化可能 |
| e-Taxで電子申告 | マイナンバーカード+スマホでOK |
| 期限内に申告 | 2025年分は2026年3月16日(月)まで |
「複式簿記って難しそう」と構える方が多いですが、freee・マネーフォワード・弥生などの会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードを連携するだけで自動仕訳が作成されます。実務上、手作業で仕訳帳を書いている方はほぼいません。月額1,000〜2,000円程度の投資で年間19.5万円の節税ができるなら、投資対効果は圧倒的です。
確定申告の全体ステップ|年間スケジュール付き
フリーランスの確定申告は、大きく5つのステップで進めます。「申告期間(2月16日〜3月15日)に慌てて作業する」のではなく、年間を通じた準備が重要です。
開業届+青色申告承認申請書を提出する
開業から2か月以内(1月1日〜1月15日に開業した場合は3月15日まで)に税務署へ提出します。青色申告承認申請書を出さないと、その年は白色申告しかできません。これから開業する方は、開業届と同時に提出するのが鉄則です。
日々の取引を記帳する(1月〜12月)
会計ソフトに売上・経費を入力します。銀行口座やクレジットカードを連携すれば、大半の取引は自動で取り込まれます。領収書・レシートは月ごとに封筒やクリアファイルに保管し、最低でも月1回は記帳を済ませましょう。
年末の決算整理を行う(12月〜1月)
12月31日時点の残高確認、未収入金の計上、減価償却費の計算、家事按分(かじあんぶん)の適用などを行います。棚卸しが必要な業種(物販など)はこの時期に在庫を数えます。
確定申告書+青色申告決算書を作成する(1月〜3月)
会計ソフトの「確定申告」機能で決算書と申告書を作成します。控除証明書(社会保険料・生命保険料・ふるさと納税など)の金額を入力し、所得税額を確定させます。
e-Taxで電子申告+納税する(2月16日〜3月15日)
マイナンバーカード+スマホ(またはICカードリーダー)でe-Taxから送信します。納税は振替納税(4月中旬引落し)、クレジットカード、コンビニ、QRコード決済などが選べます。還付の場合は1〜2か月で指定口座に振り込まれます。
実務で最も多い失敗は「12月末にまとめて1年分の記帳をする」パターンです。領収書の紛失、記憶の曖昧さ、作業の膨大さで確実にミスが出ます。月1回の記帳を習慣化するだけで、確定申告の作業時間は半分以下になります。
必要書類チェックリスト【2025年分】
確定申告で必要な書類は、事業の内容や受ける控除の種類によって異なります。以下のチェックリストで漏れがないか確認してください。
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 青色申告決算書(損益計算書+貸借対照表)
- マイナンバーカード(e-Tax利用時)
- 銀行口座情報(還付金の振込先)
- 帳簿データ(仕訳帳・総勘定元帳)※提出不要だが保存義務あり
- 社会保険料(国民年金・国民健康保険)の控除証明書
- 生命保険料の控除証明書
- 地震保険料の控除証明書
- 小規模企業共済の払込証明書
- iDeCoの小規模企業共済等掛金控除証明書
- ふるさと納税の寄附金受領証明書
- 医療費控除の明細書(または医療費通知)
- 住宅ローン控除の残高証明書(初年度のみ)
マイナポータルとe-Taxを連携させると、生命保険料控除証明書やふるさと納税の寄附金受領証明書が自動入力される対象が年々拡大しています。2025年分ではさらに対象が広がっているため、マイナポータル連携は必ず設定してください。紙の証明書を手入力する手間が大幅に減ります。
年収別シミュレーション|税金はいくらになる?
「結局、税金はいくら払うの?」という疑問に、年収(売上)別の具体的な数字でお答えします。以下は2025年分(令和7年分)の税制改正を反映した計算です。前提条件は、青色申告65万円控除を適用し、経費率は業種平均的な30%、社会保険料控除は概算額を使用しています。
【ケース1】年収300万円(経費90万円)のWebライター
【ケース2】年収500万円(経費150万円)のデザイナー
【ケース3】年収800万円(経費240万円)のITエンジニア
ケース3の年収800万円のエンジニアの例では、小規模企業共済(月7万円)に加入することで、加入しない場合(所得税約33.6万円)と比較して年間約16.8万円の節税になっています。さらにiDeCo(月6.8万円)を併用すれば、追加で年間約13.6万円の節税が可能です。年収が上がるほど、節税対策の効果は大きくなります。
経費の基本|何がいくらまで落とせる?
フリーランスの税金を左右する最大の要素は「経費」です。正しく経費を計上すれば課税所得が減り、所得税・住民税・国民健康保険料のすべてが下がります。
フリーランスの主な経費一覧
| 勘定科目 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 通信費 | 携帯電話、インターネット回線 | プライベート兼用は家事按分が必要 |
| 旅費交通費 | 電車代、タクシー代、出張の宿泊費 | ICカード履歴やアプリの利用明細を保管 |
| 消耗品費 | 文具、10万円未満のPC周辺機器 | 10万円以上は減価償却(30万円未満は特例あり) |
| 地代家賃 | 事務所家賃、自宅の一部 | 自宅兼事務所は面積比or時間比で按分 |
| 水道光熱費 | 電気代、ガス代 | 自宅兼事務所は使用割合で按分 |
| 接待交際費 | クライアントとの飲食代、手土産 | 相手の名前と目的をメモする習慣を |
| 外注費 | デザイン外注、ライター報酬 | 支払先が個人の場合は源泉徴収が必要な場合あり |
| 広告宣伝費 | Web広告費、名刺印刷代 | SNS広告費も全額経費 |
| 研修費 | セミナー参加費、書籍代、オンライン講座 | 業務と関連性があれば経費OK |
| 支払手数料 | クラウドソーシングの手数料、振込手数料 | 売上からの天引き分も経費として計上可能 |
経費で最も税務調査で問題になりやすいのは「接待交際費」と「旅費交通費」です。領収書の裏に「誰と・何の目的で」を一言メモしておくだけで、税務調査時の説明が格段に楽になります。たった10秒の習慣が、将来のリスクを大幅に減らします。
【2025年分】税制改正の影響とフリーランスがやるべきこと
2025年分(令和7年分)の確定申告では、複数の重要な税制改正が適用されます。フリーランスに直接影響する改正ポイントを整理します。
改正① 基礎控除の引き上げ
合計所得金額に応じて基礎控除が段階的に拡大。所得132万円以下なら最大95万円(従来48万円)。所得655万円以下でも58万円〜88万円に増額されます。フリーランスの多くは、従来より所得税が下がります。
改正② 給与所得控除の最低保障額引き上げ
給与所得控除の最低保障額が55万円 → 65万円に引き上げ。副業フリーランスで本業の給与がある方は、給与所得の計算が変わります。いわゆる「103万円の壁」は「160万円の壁」に移行しました。
改正③ 特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の子どもがいる場合、子のアルバイト収入が150万円までなら、親は63万円の扶養控除を満額受けられます。大学生の子どもがいるフリーランスは必ず確認してください。
改正④ ID・パスワード方式の新規発行停止
e-Taxの「ID・パスワード方式」は2025年9月末で新規発行が停止されます。今後はマイナンバーカード方式が必須になるため、まだカードを取得していない方は早めに申請してください。
基礎控除の改正で「所得132万円以下」のフリーランスは特に恩恵が大きく、控除額が48万円から95万円に47万円も増えます。所得税率5%の方でも約2.35万円、住民税(10%)も含めると約7万円の減税効果です。ただし、2027年分以降は段階的控除の加算部分(88万円・68万円など)が58万円に統一される予定なので、恒久的な減税ではない点に注意してください。
業種別チェックリスト|申告時に見落としやすいポイント
フリーランスといっても業種によって経費の構成や注意点は大きく異なります。主要な業種ごとに、申告時のチェックポイントをまとめました。
ITエンジニア・プログラマー
- PC・ディスプレイ(10万円超は減価償却、30万円未満は少額減価償却の特例で一括経費)
- クラウドサービス(AWS・GCP・GitHubなど)の月額課金
- 技術書・オンライン学習(Udemy等)は研修費で経費
- 自宅兼事務所の家賃・電気代は面積比40〜60%で按分が多い
- 源泉徴収されていないか確認(SES契約は源泉なしが多い)
デザイナー・動画クリエイター
- Adobe CC・Figma・DaVinci Resolveなどのサブスク費用
- 高スペックPC・カメラ機材は減価償却(耐用年数4〜5年)
- 素材サイト(Shutterstock・Adobe Stock等)の年間契約
- 撮影に必要な衣装・小道具は消耗品費で経費
- クライアントとのオンラインミーティングのカフェ代は会議費
ライター・コンサルタント
- 取材費(交通費・飲食代)は旅費交通費 or 取材費で計上
- 書籍購入費は新聞図書費で全額経費
- 報酬の10.21%が源泉徴収されているケースが多い → 還付申告
- 自宅の通信費(Wi-Fi)は50〜70%で按分が一般的
- コワーキングスペースの利用料は地代家賃で経費
業種によって「適正な経費率」の目安は異なります。ITエンジニアなら20〜30%、デザイナーなら30〜40%、配達員なら40〜50%が一般的な水準です。この目安を大きく超える経費率は税務調査で目をつけられやすくなるので、正当な根拠を持った経費計上を心がけてください。
インボイス制度への対応
2023年10月にスタートしたインボイス制度は、フリーランスの確定申告にも影響しています。インボイス発行事業者に登録した場合、消費税の申告・納税が新たに必要になります。
| 項目 | 登録した場合 | 登録しない場合 |
|---|---|---|
| 消費税の納税 | 必要(2割特例で軽減可能) | 不要(免税事業者のまま) |
| 取引先への影響 | 影響なし | 取引先が仕入税額控除できず、値引き交渉の可能性 |
| 申告書類 | 所得税+消費税の2種類 | 所得税のみ |
| 2割特例の適用 | 2026年分まで適用可能 | — |
インボイス登録した方で消費税の計算方法に迷うなら、まずは「2割特例」を検討してください。売上にかかる消費税の2割だけを納付する制度で、経費の消費税を集計する手間が不要です。年間売上500万円なら納税額は約9万円程度。簡易課税や本則課税と比較して最も有利になるケースが多いです。
よくある質問(FAQ)
Q. フリーランスの確定申告はいくらから必要ですか?
2025年分からは、事業所得が95万円(基礎控除額)を超える場合に原則として確定申告が必要です。2024年分以前は48万円が基準でした。ただし、源泉徴収されている方は所得がこれ以下でも還付申告をしないと税金が戻りません。
Q. 確定申告の期限に間に合わなかったらどうなりますか?
期限後でも確定申告書の提出は可能ですが、「無申告加算税」(本来の税額の5〜20%)と「延滞税」(年2.4%〜8.7%)がペナルティとして課されます。さらに、青色申告65万円控除は期限内申告でなければ適用されず、10万円控除に減額されます。55万円分の控除を失うことになるため、必ず期限内に提出してください。
Q. 確定申告を税理士に頼むといくらかかりますか?
フリーランスの確定申告を税理士に依頼する場合の相場は、年間売上500万円以下で5万〜10万円、売上1,000万円以下で10万〜15万円程度です。「費用が高い」と感じるかもしれませんが、経費の見落とし防止、節税提案、税務調査リスクの低減などを考えると、売上500万円以上なら税理士への依頼を検討する価値があります。
Q. 会計ソフトは何を使えばいいですか?
フリーランスに人気のクラウド会計ソフトは、freee会計・マネーフォワードクラウド・やよいの青色申告オンラインの3つです。初心者にはfreee(画面がシンプル)、簿記知識がある方にはマネーフォワード(仕訳入力が柔軟)、コストを抑えたい方にはやよい(初年度無料プランあり)がおすすめです。
Q. 赤字でも確定申告すべきですか?
はい、赤字の年こそ確定申告すべきです。青色申告なら赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越せます。翌年に黒字が出た場合、繰り越した赤字と相殺して税金を減らせます。独立1年目は設備投資等で赤字になりやすいので、必ず申告しましょう。
「赤字だから申告しなくていい」と思って無申告だった方が、翌年に大きく黒字が出て多額の税金を払うケースを何度も見てきました。赤字の年に申告していれば繰越控除で数十万円の節税ができたのに、もったいないの一言です。
まとめ|フリーランスの確定申告は「準備」で9割決まる
フリーランスの確定申告 7つの要点
① 開業届と青色申告承認申請書はセットで提出する
② 青色申告65万円控除でe-Tax+複式簿記は必須
③ 2025年分は基礎控除が最大95万円に拡大(所得132万円以下)
④ 経費は「領収書+メモ」のセットで記録する習慣をつける
⑤ 年収が上がるほど小規模企業共済・iDeCoの節税効果が大きい
⑥ インボイス登録者は2割特例を最優先で検討する
⑦ 赤字でも申告すれば翌年以降3年間の繰越控除が使える
フリーランスの確定申告は、事前の準備がすべてです。月1回の記帳を習慣化し、領収書をきちんと保管し、年末に決算整理を済ませておけば、申告期間の作業は2〜3時間で終わります。
「自分でやるのは不安」「節税対策を相談したい」「記帳が追いつかない」という方は、税理士への依頼も選択肢のひとつです。確定申告ドットコムでは、フリーランス・個人事業主に特化した確定申告代行サービスを、シンプルプラン29,800円(税込)からご提供しています。記帳代行から申告書の作成・提出、節税アドバイスまでワンストップで対応しますので、お気軽にご相談ください。
確定申告を税理士に頼む費用はいくら?料金相場と安く依頼するコツ 電子帳簿保存法をわかりやすく解説|フリーランスが最低限やること





確定申告を「義務」としてだけ捉えている方が多いですが、実務上は「事業の決算」と同じです。1年間の数字を振り返ることで、利益率の低い案件や無駄な経費が見えてきます。節税だけでなく、事業の改善にもつながる重要な作業です。