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投資(株式・FX・暗号資産)の利益と事業所得を合わせて申告する方法
事業所得がある個人事業主・フリーランスで、株式投資・FX・暗号資産の利益もある方に向けて、3つの所得区分を同じ申告書でまとめて申告する手順を完全ガイドします。この記事を読めば、申告分離課税と総合課税の使い分け・損益通算の可否・第三表の記入まで自分で進められるようになります。
🏆 結論:3つの投資の課税方式は別々、事業所得とは原則合算しない
株式(譲渡所得)・FX(先物取引に係る雑所得等)は申告分離課税20.315%、暗号資産(雑所得)は総合課税最大55%です。事業所得との損益通算は原則できず、それぞれ別計算で第一表・第三表に記入します。投資の損失を事業所得から差し引くことはできません。2026年度税制改正大綱で暗号資産も申告分離課税20.315%への移行方針(2027年春施行想定)が示されました。
3つの投資の所得区分と課税方式の違い
結論から言えば、株式・FX・暗号資産はそれぞれ別の課税方式です。事業所得と一緒に申告書を提出しますが、税額は別々に計算されます。
| 投資種別 | 所得区分 | 課税方式 | 税率 |
|---|---|---|---|
| 上場株式の譲渡 | 譲渡所得 | 申告分離課税 | 20.315% |
| 配当金 | 配当所得 | 総合課税 or 申告分離課税 | 最大55% or 20.315% |
| FX(国内) | 先物取引に係る雑所得等 | 申告分離課税 | 20.315% |
| FX(海外) | 雑所得(その他) | 総合課税 | 最大55% |
| 暗号資産 | 雑所得 | 総合課税 | 最大55% |
| 暗号資産デリバティブ | 雑所得 | 総合課税 | 最大55% |
| 事業所得 | 事業所得 | 総合課税 | 最大55% |
申告分離課税と総合課税の違い
申告分離課税は、他の所得と分けて一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)で課税される方式です。所得が大きくても税率は変わりません。一方総合課税は給与所得・事業所得・雑所得などを合算して累進税率(5〜45%+住民税10%)で課税されます。
💡 実務のポイント
課税方式が違うため、株式200万円利益・暗号資産100万円利益の場合、株式は分離課税で約40万円課税、暗号資産は事業所得などと合算して総合課税となります。同じ「投資」でも税率も計算式も全く異なるため、それぞれの申告手続きが必要です。
事業所得との損益通算の可否
損益通算の可否マトリクス
事業所得と投資の損失・利益が同じ年に発生した場合、相殺(損益通算)できるかどうかは、所得区分の組み合わせで決まります。
| 損失側 | 利益側との損益通算 | 繰越控除 |
|---|---|---|
| 事業所得の赤字 | 他の総合課税所得(給与・不動産等)と通算可 | 青色3年 |
| 株式譲渡損失 | 配当・他の上場株式譲渡益と通算可 | 3年 |
| FX損失(国内) | 他の先物取引利益とのみ通算可 | 3年 |
| 暗号資産損失 | 同年内の他の総合課税雑所得と通算可 | 不可 |
| 海外FX損失 | 同年内の他の総合課税雑所得と通算可 | 不可 |
具体的な損益通算の例
🧮 ケース別損益通算の可否
ケース1:事業所得100万円赤字+株式100万円利益
→ 通算不可。事業所得は給与・不動産等と通算可だが、申告分離課税の株式譲渡益とは通算不可。
ケース2:事業所得200万円黒字+FX50万円赤字
→ 通算不可。FXは「先物取引に係る雑所得等」内のみ通算可、事業所得とは別計算。
ケース3:事業所得100万円黒字+暗号資産50万円利益
→ 両方とも総合課税のため合算可(150万円が課税対象)。
ケース4:暗号資産100万円赤字+副業ブログ50万円利益
→ 同じ年内の総合課税の雑所得同士なので通算可(差額50万円赤字は事業所得と通算不可)。
⚠️ よくある誤解
「事業の赤字を株式の利益で埋められる」という認識は誤りです。事業所得(総合課税)と株式譲渡益(申告分離課税)は計算が分離されているため、片方の損失で他方の税額を減らすことはできません。同じ課税方式内でのみ損益通算が可能です。
株式譲渡益・配当の確定申告
特定口座と一般口座の使い分け
| 口座種別 | 確定申告 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 不要(任意) | 証券会社が源泉徴収。年間取引報告書で申告可 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 必要 | 証券会社が損益計算。確定申告は自分で |
| 一般口座 | 必要 | 損益計算も自分で行う |
| NISA口座 | 不要 | 非課税枠内なら申告不要 |
申告した方が有利なケース
特定口座(源泉徴収あり)でも、以下の場合は確定申告した方が税金が戻ります。
- 複数の証券会社を使っている:A社で利益・B社で損失なら通算で還付
- 過去の繰越損失がある:過去3年の繰越損失と通算可能
- 所得税率が低い:配当を総合課税で申告すれば税負担が下がる場合あり
- 株式の損失を翌年以降に繰り越したい:3年間繰越控除のため必須
第三表での記入
株式譲渡益・申告分離課税の配当は、確定申告書の第三表(分離課税用)に記入します。第一表の事業所得とは別計算です。
| 記入箇所 | 内容 |
|---|---|
| 第三表「株式等の譲渡」収入金額 | 年間譲渡収入の合計 |
| 第三表「株式等の譲渡」所得金額 | 年間譲渡損益(取得費・手数料控除後) |
| 「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算等及び繰越控除」 | 繰越損失の使用額・残額 |
| 第三表 税額計算 | 譲渡所得×15.315%(所得税分) |
FXの確定申告
FX収入の構成と必要経費
FXの所得は「為替差損益+スワップポイント − 必要経費」で計算します。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 為替差損益 | 通貨ペアの売買による損益 |
| スワップポイント | 通貨間の金利差収入 |
| 必要経費 | セミナー・書籍・PC・通信費・ソフトウェア |
複数のFX会社を使っている場合
複数のFX会社の取引はすべて合算します。各社のマイページから「年間取引報告書」をダウンロードして、損益・スワップ・経費を集計します。
国内FXと海外FXの違い
国内FX(金商法登録業者)と海外FX(無登録業者)では税率が大きく違います。
| 項目 | 国内FX | 海外FX |
|---|---|---|
| 所得区分 | 先物取引に係る雑所得等 | 雑所得(その他) |
| 課税方式 | 申告分離課税 | 総合課税 |
| 税率 | 一律20.315% | 最大55% |
| 繰越控除 | 3年 | 不可 |
| 事業所得との関係 | 分離(合算しない) | 事業所得と同じ総合課税で合算 |
📢 海外FXは事業所得との合算で税率上昇
事業所得と海外FX収入はどちらも総合課税のため合算され、累進税率が適用されます。事業所得600万円+海外FX300万円=合計900万円で税率33%帯となり、海外FXは国内FXの20.315%に比べて約12.7%も税率が高くなります。海外FXのレバレッジが高くても、税率を考慮すると国内FXより不利なケースが多いです。
暗号資産の確定申告
取得価額の計算方法
暗号資産の取得価額は移動平均法または総平均法で計算します。一度選んだ方法は、原則として変更不可です。
| 方法 | 計算方式 | 手間 |
|---|---|---|
| 移動平均法 | 取引のたびに平均取得価額を計算 | 手間多・正確 |
| 総平均法 | 年間の総購入額÷総購入数量 | 簡単・年末まで判定不可 |
課税のタイミング
暗号資産は売却時だけでなく、以下のタイミングでも所得が発生します。
- 暗号資産→日本円:売却時に利益確定
- 暗号資産→他の暗号資産:交換時の時価で利益確定(BTC→ETH等)
- 暗号資産で商品・サービス購入:購入時の時価で利益確定
- マイニング・ステーキング報酬:取得時の時価で雑所得
- エアドロップ:取得時の時価で雑所得
💡 実務のポイント
「日本円に換金していないから課税されない」という誤解が多発します。暗号資産同士の交換も課税対象です。BTC100万円購入→ETHに交換した時点でBTCの売却扱いとなり、購入時より値上がりしていれば利益確定として課税されます。CryptactやGtaxなどの暗号資産損益計算ツールを活用すると効率的です。
事業活動の一環としての投資(事業所得への取込)
事業所得として認められるケース
原則として投資収益は雑所得・譲渡所得ですが、事業活動の一環として行う場合は事業所得に取り込めるケースがあります。
| ケース | 事業所得として可能か |
|---|---|
| 事業の決済手段として暗号資産を保有・売却 | 事業所得 |
| 事業資金の余剰を株式投資に運用 | 譲渡所得(事業所得不可) |
| 投資業として継続的に売買(プロトレーダー) | 事業所得(厳格判定) |
| 事業用車両を中古市場で売却 | 事業所得(譲渡所得) |
⚠️ プロトレーダー認定は厳格
投資のみで生計を立てるプロトレーダーは事業所得として認められる可能性がありますが、税務調査では非常に厳格に判定されます。事務所・専用設備・継続性・社会通念上の事業性が必要で、開業届を出しているだけでは認められません。判定が難しいケースは税理士相談が必須です。
確定申告書の作成手順
3つの所得を一緒に申告する流れ
📋 申告書作成5ステップ
- ステップ1:事業所得の青色申告決算書を完成させる(売上・経費)
- ステップ2:株式・FX・暗号資産の年間取引報告書を準備
- ステップ3:第一表に総合課税の所得(事業所得・暗号資産・配当(総合)等)を記入
- ステップ4:第三表に申告分離課税の所得(株式譲渡・FX・申告分離配当)を記入
- ステップ5:第一表で総合課税の税額・第三表で分離課税の税額を計算し合算
添付書類
| 所得区分 | 必要な添付書類 |
|---|---|
| 事業所得(青色) | 青色申告決算書(4枚組) |
| 株式譲渡 | 特定口座年間取引報告書(電子データ可) |
| FX | 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書 |
| 暗号資産 | 国税庁の暗号資産計算書(任意) |
| 繰越損失 | 過去の繰越損失計算書 |
2026年度税制改正大綱の動向
暗号資産も申告分離課税へ
2025年12月の令和8年度税制改正大綱で、特定の暗号資産を申告分離課税20.315%とする方針が示されました。施行は2027年(令和9年)春が想定されています。
| 項目 | 現行制度 | 2027年〜(予定) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税 | 申告分離課税 |
| 税率 | 最大55% | 一律20.315% |
| 繰越控除 | 不可 | 3年 |
| 損益通算 | 同年内の雑所得のみ | 特定暗号資産同士で可 |
2025〜2027年の戦略的対応
📢 含み益・含み損の処理タイミング
含み益がある場合:新制度施行後(2027年以降)に売却する方が有利。最大55%→20.315%へ大幅減税。
含み損がある場合:現行制度では繰越控除が使えないため、利益確定の年に同年内の損益通算しか選択肢がない。新制度開始前に「損出し」を慎重に判断。
ただし、施行時期・対象範囲は2026年通常国会の審議次第のため、最新情報を確認しながら計画を立てる必要があります。
節税戦略:投資×事業所得の二刀流
事業所得の青色申告で総合的な節税
事業所得+投資収益のある個人事業主が活用できる節税策を整理します。
| 節税策 | 適用 | 効果 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除65万円 | 事業所得 | 所得圧縮で総合課税減 |
| 小規模企業共済(最大84万円) | 事業所得 | 所得控除 |
| iDeCo(年最大81.6万円) | 給与・事業所得 | 所得控除 |
| ふるさと納税 | 総合課税の所得 | 実質2,000円で返礼品 |
| NISA(新NISA1,800万円枠) | 株式・投信 | 運用益非課税 |
| 株式損失繰越控除 | 分離課税 | 3年繰越で将来の利益と相殺 |
🧮 節税スキームの効果試算
個人事業主:事業所得600万円・株式譲渡益200万円
節税前:所得税・住民税合計 約140万円
節税後(青色65万+小規模共済84万+iDeCo81.6万+ふるさと納税):約100万円
年間節税効果:約40万円(株式譲渡益への節税効果は限定的だが事業所得側で大きく圧縮)
無申告のペナルティと税務署の調査
暗号資産・FXは特に調査強化中
国税庁は暗号資産・FX・株式の取引データを業者から定期的に収集しています。マイナンバーで紐付けされた取引データから、無申告は容易に発覚します。
| 業者 | 国税庁への報告 |
|---|---|
| 国内証券会社 | 特定口座年間取引報告書(マイナンバー付) |
| 国内FX業者 | 支払調書(年間取引明細) |
| 国内暗号資産交換業者 | 年間取引報告書・税務署照会 |
| 海外取引所 | CRS(共通報告基準)で各国情報交換 |
無申告のペナルティ
| ペナルティ | 税率 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 5〜30% |
| 延滞税 | 年7.3〜14.6% |
| 重加算税 | 35〜40% |
| 過少申告加算税 | 10〜15% |
よくある質問
まとめ
📋 この記事のポイント
- 株式・国内FXは申告分離課税20.315%、暗号資産・海外FXは総合課税最大55%
- 事業所得との損益通算は原則不可。同じ課税方式内でのみ通算可
- 株式損失・FX損失は3年繰越控除可、暗号資産は不可(現行制度)
- 確定申告書は第一表(総合課税)と第三表(分離課税)に分けて記入
- 暗号資産同士の交換も課税対象。日本円化していなくても利益確定
- 事業活動の一環としての投資(決済等)は事業所得に取込可
- 2026年度税制改正大綱で暗号資産も20.315%分離課税方針(2027年春想定)
- 事業所得側の節税策(青色65万・小規模共済84万・iDeCo・NISA)と組合せ
- マイナンバー紐付けで業者から国税庁へ取引データ報告。無申告は発覚
- 5年遡及で過去取り戻し可能。早めの自主申告が損失最小化
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