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セルフメディケーション税制と医療費控除の選び方【どちらが得か計算】
医療費控除とセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)はどちらか一方しか選べません。年間医療費とOTC医薬品購入額の組合せで損益分岐点が変わるため、早見表と計算式で「自分はどちらが得か」を即判定できる構成にしました。一定の取組の要件・対象OTC医薬品の見分け方・令和8年12月末までの期限まで実務目線で解説します。
🏆 結論:年間医療費10万円が分岐点。それ未満ならセルメ税制を検討
医療費控除は10万円超(または総所得5%超)が必要なのに対し、セルフメディケーション税制は対象OTC医薬品が1.2万円超で適用可能です。医療費が10万円を大きく超える年は医療費控除、ぎりぎり届かない年で対象OTCを多く買っているならセルメ税制が有利になります。両方計算して有利な方を選択するのが鉄則で、併用はできません。
セルフメディケーション税制とは?基本のしくみ
セルフメディケーション税制は、租税特別措置法第41条の17に規定された「医療費控除の特例」です。日頃から健康診断などの「一定の取組」を行っている人が、対象のOTC医薬品(市販薬)を年間1.2万円超購入した場合、その超過分を所得から控除できます。制度の基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額の計算 | 対象OTC医薬品の年間購入額 − 12,000円(最高88,000円) |
| 最大控除額 | 88,000円(購入額10万円のとき) |
| 対象者 | 健康診断・予防接種など一定の取組を行った居住者 |
| 対象品 | スイッチOTC医薬品+指定の非スイッチOTC医薬品 |
| 家族合算 | 可(生計を一にする家族の購入分を合算) |
| 適用期限 | 令和8年(2026年)12月31日まで |
| 医療費控除との関係 | 選択適用(併用不可) |
なぜこの制度ができたのか
医療費の自己負担を軽くする「医療費控除」の足切り額(10万円)に届かない人でも、健康管理に積極的な人を税制で後押しする目的で2017年に創設されました。当初2021年で終了予定でしたが2回延長され、現在は令和8年12月末までの適用となっています。📢 制度の最新動向
セルメ税制は令和8年12月31日までの時限措置です。2027年以降の継続については、本記事執筆時点では未確定です。延長の動きと、対象成分の入れ替え(令和7年末でL-アスパラギン酸カルシウム等4成分が経過措置終了)に注意してください。年内に常備薬を買い置きする場合は、対象から外れる成分を選ばないよう、最新の対象品目一覧で確認することをおすすめします。
どちらが得か?損益分岐点の考え方
医療費控除とセルメ税制は、どちらか有利な方を選択して申告します。判断のコアは「足切り額の差」です。それぞれの計算式
| 制度 | 計算式 | 最大控除額 |
|---|---|---|
| 医療費控除 | 医療費合計 − 保険金等 − 10万円 (総所得200万未満は総所得×5%) | 200万円 |
| セルメ税制 | 対象OTC医薬品購入額 − 1.2万円 | 8.8万円 |
損益分岐点の数式
医療費控除のうち、セルメ税制対象のOTC医薬品購入額を B、それ以外の医療費を M とします。💡 損益分岐点の考え方
医療費控除の控除額 = (M + B) − 10万円
セルメ税制の控除額 = B − 1.2万円
両者が等しくなるのは、M = 8.8万円(つまり対象OTC以外の医療費が8.8万円)のとき。
M(対象OTC以外の医療費)が8.8万円を超えるなら医療費控除、下回るならセルメ税制が有利。
早見表で即判定
医療費控除(M + B)とセルメ税制(B のみ)でどちらの控除額が大きいかを早見表化しました。| 対象OTC以外の医療費(M) | 対象OTC購入額(B) | 医療費控除額 | セルメ控除額 | 有利な方 |
|---|---|---|---|---|
| 5万円 | 3万円 | 0円(足切り未満) | 18,000円 | セルメ |
| 8万円 | 3万円 | 10,000円 | 18,000円 | セルメ |
| 8.8万円 | 3万円 | 18,000円 | 18,000円 | 同額(分岐点) |
| 15万円 | 3万円 | 80,000円 | 18,000円 | 医療費控除 |
| 3万円 | 5万円 | 0円(足切り未満) | 38,000円 | セルメ |
| 0円 | 10万円 | 0円 | 88,000円(上限) | セルメ |
| 20万円 | 0円 | 100,000円 | 0円(対象OTCなし) | 医療費控除 |
🧮 ざっくりの判断ルール
① 病院・薬局・治療費の合計(OTC以外)が 10万円を大きく超える → 医療費控除
② 病院代が10万円に届かないが、対象OTCを 1.2万円以上買っている → セルメ税制
③ 両方該当する微妙な年は、対象OTC以外の医療費が 8.8万円 を境に切り替え
最終的には両方計算して有利な方を選ぶのが安全です。
セルメ税制を使える人の要件「一定の取組」
セルメ税制を使うには、申告者本人がその年に「健康の保持増進及び疾病の予防のための一定の取組」を行っている必要があります。これが医療費控除との大きな違いです。一定の取組として認められるもの
| 区分 | 具体例 | 証明書類 |
|---|---|---|
| 保険者の健診 | 健保組合・協会けんぽ・国保の人間ドック・各種健診 | 保険者の領収書/結果通知表 |
| 市町村の健診 | 健康増進事業として実施する健康診査・がん検診 | 領収書/結果通知表 |
| 予防接種 | 定期予防接種、インフルエンザワクチン | 領収書/予防接種済証 |
| 事業主健診 | 勤務先の定期健康診断 | 結果通知表(事業主名・健診名の記載必要) |
| 特定健診 | メタボ健診、特定保健指導 | 結果通知表 |
| 市町村のがん検診 | 市区町村が実施するがん検診 | 領収書/結果通知表 |
注意:本人が取組を行っていることが必須
⚠️ 申告者本人の取組が必要
家族合算でOTC購入額をまとめても、「一定の取組」は申告者本人が行っていないと適用できません。たとえば妻名義で家族の医薬品を集計して妻が申告するなら、妻自身が健診や予防接種を受けている必要があります。配偶者や子どもの健診結果では代替できないので注意してください。
結果通知表に記載が必要な項目
事業主健診の結果通知表で証明する場合、次の項目が記載されていないと無効です。- 氏名
- 健診を受けた年(または取組を行った年)
- 事業者名(または保険者名)
- 健診名(または取組名)
対象となるOTC医薬品の見分け方
セルメ税制の対象は厚生労働省が指定したOTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)に限定されます。すべての市販薬が対象ではない点に注意してください。識別マークとレシート表示
| 確認方法 | 内容 |
|---|---|
| パッケージの共通識別マーク | セルメ税制対象品の一部にマーク表示。マークがない対象品もあるため注意 |
| レシート表示 | 対象品の品名横に「★」「※」などの印+「セルフメディケーション税制対象」の注記 |
| 厚労省の対象品目一覧 | 厚労省サイトで最新の対象一覧(PDF・Excel)を公開 |
主な対象薬効
スイッチOTC医薬品(医療用から市販用に転用された薬)と、令和4年以降に追加された非スイッチOTC医薬品が対象です。代表的な薬効は次のとおりです。| 薬効分類 | 対象例 |
|---|---|
| かぜ薬 | 総合感冒薬の一部、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン配合) |
| 胃腸薬 | H2ブロッカー含有胃腸薬、整腸剤の一部 |
| 鼻炎薬 | アレルギー性鼻炎用の内服薬・点鼻薬 |
| 皮膚薬 | 水虫薬、湿疹・皮膚炎用塗布薬の一部 |
| 肩こり・腰痛 | 湿布薬、外用消炎鎮痛剤 |
| 禁煙補助剤 | ニコチンガム、ニコチンパッチ |
📢 令和7年末で対象から外れた成分
2025年(令和7年)12月31日をもって、L-アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン、ユビデカレノンの4成分が経過措置終了によりセルメ税制の対象から外れました。これらの成分を含む常備薬を年単位で買い置きしている方は、対象品目一覧の最新版を確認してください。
対象外の薬
サプリメント、健康食品、ビタミン剤、栄養ドリンクは対象外です。一般的な総合感冒薬や胃腸薬であっても、セルメ税制の指定成分を含まないものは対象外なので、購入時にレシート表示を確認してください。セルメ税制の確定申告手順
セルメ税制の申告は通常の医療費控除より少しシンプルですが、専用明細書の作成と一定の取組を行ったことの証明書類の保管が必要です。申告の流れ
| ステップ | 作業内容 |
|---|---|
| 1 | 対象OTC医薬品のレシートを集める(家族分も含む) |
| 2 | 「一定の取組」の証明書類を準備する(健診結果通知表など) |
| 3 | セルフメディケーション税制の明細書を作成(国税庁様式) |
| 4 | 確定申告書第一表・第二表に控除額を記入 |
| 5 | e-Taxまたは郵送で提出 |
| 6 | レシート・証明書類を5年間保管 |
提出書類と保管書類
令和3年分以降は、確定申告書に「セルフメディケーション税制の明細書」を添付すれば足ります。一定の取組の証明書類は提出不要ですが、税務署から確認を求められた場合に提示できるよう5年間保管が必要です。レシートも同様です。e-Taxでの入力ポイント
確定申告書等作成コーナーで医療費控除の入力画面に進むと、「セルメ税制を選択」する分岐があります。マイナポータル連携で医療費通知情報を自動取得した場合、医療費控除モードに自動入力されるため、セルメ税制を選びたい場合はいったんデータを削除してからセルメ用の入力に切り替えます。確定申告ドットコム
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控除額 × 所得税率+住民税10%が還付額の目安です。年収別・購入額別のシミュレーションを示します。📐 シミュレーション前提
- セルメ税制を選択した場合の還付額(所得税+住民税10%)
- 各年収は給与所得者の課税所得帯を想定
- 家族合算なし、補填金等なし
| 年収(給与) | 所得税率 | 対象OTC 2万円 | 対象OTC 5万円 | 対象OTC 10万円 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 5% | 1,200円 | 5,700円 | 13,200円 |
| 500万円 | 10% | 1,600円 | 7,600円 | 17,600円 |
| 700万円 | 20% | 2,400円 | 11,400円 | 26,400円 |
| 1,000万円 | 23% | 2,640円 | 12,540円 | 29,040円 |
| 1,500万円 | 33% | 3,440円 | 16,340円 | 37,840円 |
家族合算と申告者の選び方
セルメ税制も医療費控除と同様、生計を一にする家族の購入分を合算できます。誰が申告するかで還付額が変わるのは医療費控除と同じです。共働き家庭の例
📐 前提条件
- 夫の所得税率:20%(年収700万円帯)
- 妻の所得税率:10%(年収400万円帯)
- 家族の対象OTC購入額:合計5万円(夫2万、妻2万、子1万)
- 夫婦とも健康診断を受診済み
| 申告者 | 控除額 | 所得税還付 | 住民税減額 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 夫が全員分合算 | 38,000円 | 7,600円 | 3,800円 | 11,400円 |
| 妻が全員分合算 | 38,000円 | 3,800円 | 3,800円 | 7,600円 |
制度を選ぶ際の落とし穴と注意点
実務でよく見かけるミスをまとめました。| 落とし穴 | 正しい対応 |
|---|---|
| 医療費控除とセルメを併用しようとした | 選択適用。どちらか一方のみ |
| 市販薬全部を集計した | レシートで「対象品」表示があるものだけ集計 |
| 申告者本人が健診を受けていなかった | 本人の取組必須。家族の取組では代用不可 |
| 人間ドック費用を医薬品購入額に含めた | 一定の取組費用は控除対象に含めない |
| 後日「医療費控除の方が得だった」と気づいた | 期限内なら更正の請求で訂正可能(5年) |
| 事業主健診の結果通知表に事業主名がない | 勤務先に追加証明書の発行を依頼 |
| 対象成分から外れた商品を集計してしまった | 毎年最新の対象品目一覧で確認 |
💡 実務のポイント:年単位で判定が変わる
どちらが有利かは年ごとに変わります。健康だった年はセルメ税制、入院や手術があった年は医療費控除、というように切り替えるのが普通です。家族の領収書とOTCレシートを年単位で別フォルダに整理しておけば、年末に両方計算するのが楽になります。当事務所では年末調整後の12月〜1月に、両方のシミュレーションを行ってから確定申告に臨むことをおすすめしています。
よくある質問(FAQ)
まとめ:セルメ税制と医療費控除の選び方
📋 この記事のポイント
- セルメ税制は対象OTC医薬品が1.2万円超で控除可能。最大控除額は88,000円
- 医療費控除との併用は不可。年単位でどちらか有利な方を選択
- 損益分岐点は「対象OTC以外の医療費が8.8万円」。それを超えれば医療費控除が有利
- 申告者本人が一定の取組(健診・予防接種など)を行っていることが要件
- 家族合算可。所得税率が最も高い人がまとめて申告するのが有利
- 対象品はレシート表示と厚労省の対象品目一覧で確認。令和7年末で4成分が対象除外
- 制度は令和8年12月末までの時限措置。2027年以降の継続は未確定
- レシートと「一定の取組」の証明書類は5年間保管が必要
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