セルフメディケーション税制と医療費控除の選び方【どちらが得か計算】

セルフメディケーション税制と医療費控除の選び方【どちらが得か計算】
鮎澤パートナーズ|税理士・公認会計士・社会保険労務士・行政書士
税理士(第142873号)・公認会計士(第28451号)・社会保険労務士・行政書士が監修。年間500件以上の確定申告を支援。
📋 税理士監修 🆕 令和8年12月末まで延長中 ⚖️ 損益分岐点で判定

セルフメディケーション税制と医療費控除の選び方【どちらが得か計算】

医療費控除とセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)はどちらか一方しか選べません。年間医療費とOTC医薬品購入額の組合せで損益分岐点が変わるため、早見表と計算式で「自分はどちらが得か」を即判定できる構成にしました。一定の取組の要件・対象OTC医薬品の見分け方・令和8年12月末までの期限まで実務目線で解説します。

🏆 結論:年間医療費10万円が分岐点。それ未満ならセルメ税制を検討

医療費控除は10万円超(または総所得5%超)が必要なのに対し、セルフメディケーション税制は対象OTC医薬品が1.2万円超で適用可能です。医療費が10万円を大きく超える年は医療費控除、ぎりぎり届かない年で対象OTCを多く買っているならセルメ税制が有利になります。両方計算して有利な方を選択するのが鉄則で、併用はできません。

セルフメディケーション税制とは?基本のしくみ

セルフメディケーション税制は、租税特別措置法第41条の17に規定された「医療費控除の特例」です。日頃から健康診断などの「一定の取組」を行っている人が、対象のOTC医薬品(市販薬)を年間1.2万円超購入した場合、その超過分を所得から控除できます。

制度の基本スペック

項目 内容
控除額の計算対象OTC医薬品の年間購入額 − 12,000円(最高88,000円)
最大控除額88,000円(購入額10万円のとき)
対象者健康診断・予防接種など一定の取組を行った居住者
対象品スイッチOTC医薬品+指定の非スイッチOTC医薬品
家族合算可(生計を一にする家族の購入分を合算)
適用期限令和8年(2026年)12月31日まで
医療費控除との関係選択適用(併用不可)

なぜこの制度ができたのか

医療費の自己負担を軽くする「医療費控除」の足切り額(10万円)に届かない人でも、健康管理に積極的な人を税制で後押しする目的で2017年に創設されました。当初2021年で終了予定でしたが2回延長され、現在は令和8年12月末までの適用となっています。

📢 制度の最新動向

セルメ税制は令和8年12月31日までの時限措置です。2027年以降の継続については、本記事執筆時点では未確定です。延長の動きと、対象成分の入れ替え(令和7年末でL-アスパラギン酸カルシウム等4成分が経過措置終了)に注意してください。年内に常備薬を買い置きする場合は、対象から外れる成分を選ばないよう、最新の対象品目一覧で確認することをおすすめします。

どちらが得か?損益分岐点の考え方

医療費控除とセルメ税制は、どちらか有利な方を選択して申告します。判断のコアは「足切り額の差」です。

それぞれの計算式

制度 計算式 最大控除額
医療費控除医療費合計 − 保険金等 − 10万円
(総所得200万未満は総所得×5%)
200万円
セルメ税制対象OTC医薬品購入額 − 1.2万円8.8万円

損益分岐点の数式

医療費控除のうち、セルメ税制対象のOTC医薬品購入額を B、それ以外の医療費を M とします。

💡 損益分岐点の考え方

医療費控除の控除額 = (M + B) − 10万円
セルメ税制の控除額 = B − 1.2万円

両者が等しくなるのは、M = 8.8万円(つまり対象OTC以外の医療費が8.8万円)のとき。
M(対象OTC以外の医療費)が8.8万円を超えるなら医療費控除、下回るならセルメ税制が有利。

早見表で即判定

医療費控除(M + B)とセルメ税制(B のみ)でどちらの控除額が大きいかを早見表化しました。
対象OTC以外の医療費(M) 対象OTC購入額(B) 医療費控除額 セルメ控除額 有利な方
5万円3万円0円(足切り未満)18,000円セルメ
8万円3万円10,000円18,000円セルメ
8.8万円3万円18,000円18,000円同額(分岐点)
15万円3万円80,000円18,000円医療費控除
3万円5万円0円(足切り未満)38,000円セルメ
0円10万円0円88,000円(上限)セルメ
20万円0円100,000円0円(対象OTCなし)医療費控除

🧮 ざっくりの判断ルール

① 病院・薬局・治療費の合計(OTC以外)が 10万円を大きく超える → 医療費控除
② 病院代が10万円に届かないが、対象OTCを 1.2万円以上買っている → セルメ税制
③ 両方該当する微妙な年は、対象OTC以外の医療費が 8.8万円 を境に切り替え
最終的には両方計算して有利な方を選ぶのが安全です。

セルメ税制を使える人の要件「一定の取組」

セルメ税制を使うには、申告者本人がその年に「健康の保持増進及び疾病の予防のための一定の取組」を行っている必要があります。これが医療費控除との大きな違いです。

一定の取組として認められるもの

区分 具体例 証明書類
保険者の健診健保組合・協会けんぽ・国保の人間ドック・各種健診保険者の領収書/結果通知表
市町村の健診健康増進事業として実施する健康診査・がん検診領収書/結果通知表
予防接種定期予防接種、インフルエンザワクチン領収書/予防接種済証
事業主健診勤務先の定期健康診断結果通知表(事業主名・健診名の記載必要)
特定健診メタボ健診、特定保健指導結果通知表
市町村のがん検診市区町村が実施するがん検診領収書/結果通知表

注意:本人が取組を行っていることが必須

⚠️ 申告者本人の取組が必要

家族合算でOTC購入額をまとめても、「一定の取組」は申告者本人が行っていないと適用できません。たとえば妻名義で家族の医薬品を集計して妻が申告するなら、妻自身が健診や予防接種を受けている必要があります。配偶者や子どもの健診結果では代替できないので注意してください。

結果通知表に記載が必要な項目

事業主健診の結果通知表で証明する場合、次の項目が記載されていないと無効です。
  • 氏名
  • 健診を受けた年(または取組を行った年)
  • 事業者名(または保険者名)
  • 健診名(または取組名)
勤務先の結果通知表に事業主名がない場合は、人事部に証明書フォームでの追加証明を依頼する必要があります。

対象となるOTC医薬品の見分け方

セルメ税制の対象は厚生労働省が指定したOTC医薬品(一般用医薬品・要指導医薬品)に限定されます。すべての市販薬が対象ではない点に注意してください。

識別マークとレシート表示

確認方法 内容
パッケージの共通識別マークセルメ税制対象品の一部にマーク表示。マークがない対象品もあるため注意
レシート表示対象品の品名横に「★」「※」などの印+「セルフメディケーション税制対象」の注記
厚労省の対象品目一覧厚労省サイトで最新の対象一覧(PDF・Excel)を公開

主な対象薬効

スイッチOTC医薬品(医療用から市販用に転用された薬)と、令和4年以降に追加された非スイッチOTC医薬品が対象です。代表的な薬効は次のとおりです。
薬効分類 対象例
かぜ薬総合感冒薬の一部、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン配合)
胃腸薬H2ブロッカー含有胃腸薬、整腸剤の一部
鼻炎薬アレルギー性鼻炎用の内服薬・点鼻薬
皮膚薬水虫薬、湿疹・皮膚炎用塗布薬の一部
肩こり・腰痛湿布薬、外用消炎鎮痛剤
禁煙補助剤ニコチンガム、ニコチンパッチ

📢 令和7年末で対象から外れた成分

2025年(令和7年)12月31日をもって、L-アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン、ユビデカレノンの4成分が経過措置終了によりセルメ税制の対象から外れました。これらの成分を含む常備薬を年単位で買い置きしている方は、対象品目一覧の最新版を確認してください。

対象外の薬

サプリメント、健康食品、ビタミン剤、栄養ドリンクは対象外です。一般的な総合感冒薬や胃腸薬であっても、セルメ税制の指定成分を含まないものは対象外なので、購入時にレシート表示を確認してください。

セルメ税制の確定申告手順

セルメ税制の申告は通常の医療費控除より少しシンプルですが、専用明細書の作成と一定の取組を行ったことの証明書類の保管が必要です。

申告の流れ

ステップ 作業内容
1対象OTC医薬品のレシートを集める(家族分も含む)
2「一定の取組」の証明書類を準備する(健診結果通知表など)
3セルフメディケーション税制の明細書を作成(国税庁様式)
4確定申告書第一表・第二表に控除額を記入
5e-Taxまたは郵送で提出
6レシート・証明書類を5年間保管

提出書類と保管書類

令和3年分以降は、確定申告書に「セルフメディケーション税制の明細書」を添付すれば足ります。一定の取組の証明書類は提出不要ですが、税務署から確認を求められた場合に提示できるよう5年間保管が必要です。レシートも同様です。

e-Taxでの入力ポイント

確定申告書等作成コーナーで医療費控除の入力画面に進むと、「セルメ税制を選択」する分岐があります。マイナポータル連携で医療費通知情報を自動取得した場合、医療費控除モードに自動入力されるため、セルメ税制を選びたい場合はいったんデータを削除してからセルメ用の入力に切り替えます。

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還付額シミュレーション(年収別)

控除額 × 所得税率+住民税10%が還付額の目安です。年収別・購入額別のシミュレーションを示します。

📐 シミュレーション前提

  • セルメ税制を選択した場合の還付額(所得税+住民税10%)
  • 各年収は給与所得者の課税所得帯を想定
  • 家族合算なし、補填金等なし
年収(給与) 所得税率 対象OTC 2万円 対象OTC 5万円 対象OTC 10万円
300万円5%1,200円5,700円13,200円
500万円10%1,600円7,600円17,600円
700万円20%2,400円11,400円26,400円
1,000万円23%2,640円12,540円29,040円
1,500万円33%3,440円16,340円37,840円
控除額の上限が88,000円のため、対象OTC10万円超の購入額は還付額が頭打ちになります。

家族合算と申告者の選び方

セルメ税制も医療費控除と同様、生計を一にする家族の購入分を合算できます。誰が申告するかで還付額が変わるのは医療費控除と同じです。

共働き家庭の例

📐 前提条件

  • 夫の所得税率:20%(年収700万円帯)
  • 妻の所得税率:10%(年収400万円帯)
  • 家族の対象OTC購入額:合計5万円(夫2万、妻2万、子1万)
  • 夫婦とも健康診断を受診済み
申告者 控除額 所得税還付 住民税減額 合計
夫が全員分合算38,000円7,600円3,800円11,400円
妻が全員分合算38,000円3,800円3,800円7,600円
夫が申告した方が3,800円(1.5倍)有利です。所得税率が高い人にまとめるのが鉄則という点は医療費控除と同じです。ただし、申告者本人が一定の取組を行っている必要がある点に注意してください。

制度を選ぶ際の落とし穴と注意点

実務でよく見かけるミスをまとめました。
落とし穴 正しい対応
医療費控除とセルメを併用しようとした選択適用。どちらか一方のみ
市販薬全部を集計したレシートで「対象品」表示があるものだけ集計
申告者本人が健診を受けていなかった本人の取組必須。家族の取組では代用不可
人間ドック費用を医薬品購入額に含めた一定の取組費用は控除対象に含めない
後日「医療費控除の方が得だった」と気づいた期限内なら更正の請求で訂正可能(5年)
事業主健診の結果通知表に事業主名がない勤務先に追加証明書の発行を依頼
対象成分から外れた商品を集計してしまった毎年最新の対象品目一覧で確認

💡 実務のポイント:年単位で判定が変わる

どちらが有利かは年ごとに変わります。健康だった年はセルメ税制、入院や手術があった年は医療費控除、というように切り替えるのが普通です。家族の領収書とOTCレシートを年単位で別フォルダに整理しておけば、年末に両方計算するのが楽になります。当事務所では年末調整後の12月〜1月に、両方のシミュレーションを行ってから確定申告に臨むことをおすすめしています。

よくある質問(FAQ)

セルメ税制と医療費控除を併用できますか?
併用できません。どちらか有利な方を選択して申告します。確定申告期限内であればやり直しできますが、期限後は当初選択した制度から変更できません(更正の請求は別論点)。両方計算して有利な方を選ぶのが鉄則です。
家族の市販薬代もまとめてセルメ税制を使えますか?
使えます。生計を一にする配偶者・子・親などの対象OTC医薬品の購入額を合算できます。ただし、申告者本人が「一定の取組」(健康診断・予防接種など)を行っていることが要件です。家族の取組では代用できません。
対象のOTC医薬品かどうか、どこで確認できますか?
最も確実なのはレシートです。対象品の品名横に「★」「※」などの印が付き、レシート末尾に「セルフメディケーション税制対象」と注記されます。パッケージの共通識別マークも目印ですが、マークがない対象品もあります。最新の対象品目一覧は厚生労働省サイトでPDF・Excelで公開されています。
健康診断の費用もセルメ税制の控除額に含められますか?
含められません。健康診断費用や予防接種費用は「一定の取組」を行ったことの要件にすぎず、控除額の計算には算入できません。控除対象は対象OTC医薬品の購入額のみです。
勤務先の定期健康診断だけで「一定の取組」の要件を満たせますか?
満たせます。事業主健診(労働安全衛生法に基づく定期健診)は対象です。ただし結果通知表に「氏名・健診名・事業主名・受診年」の記載が必要です。記載が不足している場合は、勤務先に追加証明書の発行を依頼してください。
セルメ税制はいつまで使えますか?
現行制度は令和8年(2026年)12月31日までの時限措置です。2027年以降の継続については、本記事執筆時点では未確定です。延長や対象成分の変更がある可能性があるため、最新の税制改正情報を確認してください。年末に常備薬を買い置きする場合は、対象成分の入れ替えにも注意が必要です。
対象OTCを年間1.2万円ぴったり買った場合、控除はゼロですか?
はい、控除額はゼロです。「12,000円を超える部分」が控除対象なので、12,000円以下では適用されません。控除を受けるには12,001円以上の購入が必要です。
控除額の上限88,000円を超えて買った薬は無駄ですか?
控除上限を超える購入分(10万円超部分)は控除に反映されません。ただし家族の健康のために必要な購入であれば、それ自体に意味はあります。年内の駆け込み購入で上限超過になりそうな場合は、年明けに購入を回す方が翌年分の控除に活用できます。
過去年分のセルメ税制を遡って申告できますか?
還付申告は5年遡及可能です。2026年中なら令和3年分まで申告できます。ただしその年に「一定の取組」を行っていた証明書類(5年保管されているもの)が必要です。レシートも残っていることが条件です。
医療費控除とセルメ税制、税理士はどう判定しますか?
当事務所では両方のパターンを試算して、還付額が大きい方を選びます。判定の決め手は「対象OTC以外の医療費が8.8万円を超えるか否か」です。年によって医療費が変動するご家庭は毎年判定し直すこと、ふるさと納税の上限額にも影響するため併せて再試算することをおすすめしています。確定申告丸ごとお任せいただければ、最適な制度選択まで一括で対応します。

まとめ:セルメ税制と医療費控除の選び方

📋 この記事のポイント

  • セルメ税制は対象OTC医薬品が1.2万円超で控除可能。最大控除額は88,000円
  • 医療費控除との併用は不可。年単位でどちらか有利な方を選択
  • 損益分岐点は「対象OTC以外の医療費が8.8万円」。それを超えれば医療費控除が有利
  • 申告者本人が一定の取組(健診・予防接種など)を行っていることが要件
  • 家族合算可。所得税率が最も高い人がまとめて申告するのが有利
  • 対象品はレシート表示と厚労省の対象品目一覧で確認。令和7年末で4成分が対象除外
  • 制度は令和8年12月末までの時限措置。2027年以降の継続は未確定
  • レシートと「一定の取組」の証明書類は5年間保管が必要
「医療費控除とセルメ税制、どちらが得か自分で判定する自信がない」「家族合算で誰が申告すれば最適か知りたい」「過去年分を遡って取り戻したい」とお考えの方は、ぜひ鮎澤パートナーズにご相談ください。両方のパターンを試算した上で最適な制度選択を行い、ふるさと納税の上限額再計算まで含めて一括サポートいたします。

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