株式・配当の確定申告【特定口座と一般口座の違い・損益通算】

株式・配当の確定申告【特定口座と一般口座の違い・損益通算】
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第28451号)・税理士(第142873号)・社会保険労務士・行政書士が監修。年間100社以上の法人決算・会社設立を支援。
📋 税理士監修 📈 株式投資特化 🆕 新NISA対応

株式・配当の確定申告【特定口座と一般口座の違い・損益通算】

株式投資で利益・損失が出た方へ。特定口座(源泉あり/なし)・一般口座・NISAの違い、損益通算と3年繰越控除、配当の3つの課税方法、源泉ありでも申告すべき5ケースまで税理士が完全解説。この記事を読めば、自分にとって最適な申告方法を判断できます。

🏆 結論:「特定口座源泉あり」なら原則申告不要・ただし還付チャンスあり

特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が納税まで代行するため原則確定申告不要。一般口座と特定口座(源泉徴収なし)は確定申告必須。NISAは非課税のため申告不要(ただし損失も「ないもの」とみなされる)。源泉ありでも①複数口座の損益通算②3年繰越控除③配当控除④外国税額控除⑤総合課税で税率引下げのために確定申告すべきケースが多数。社会保険料への影響にも要注意です。

株式投資の3つの口座:違いを完全比較

証券会社で開設できる口座は、課税口座2種類(特定口座・一般口座)と非課税口座1種類(NISA口座)の合計3種類があります。さらに特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があるため、実質的には4種類の口座区分を理解する必要があります。

4つの口座区分の完全比較表

項目 特定口座(源泉あり) 特定口座(源泉なし) 一般口座 NISA口座
確定申告原則不要必要必要不要(非課税)
税金計算証券会社が自動投資家が自分で投資家が自分で不要
年間取引報告書ありありなしあり(参考用)
譲渡益への課税20.315%20.315%20.315%非課税
配当への課税20.315%(源泉徴収)20.315%(源泉徴収)20.315%(源泉徴収)非課税
他口座との損益通算確定申告で可確定申告で可確定申告で可不可
3年繰越控除確定申告で可確定申告で可確定申告で可不可
向いている人手間ゼロ希望者扶養維持・主婦学生非上場株保有者長期投資家

💡 実務のポイント

弊所が担当した会社員(年収700万円・株式投資歴10年)のケースでは、4社の証券会社に口座を分散していました。3社で利益、1社で損失という状況で、放置すれば3社分の利益に20.315%課税されたまま終わるところを、確定申告で損益通算したことで約45万円の還付。「源泉ありだから申告不要」という常識は、複数口座保有者にとっては誤解だと痛感した事例です。

特定口座(源泉徴収あり)でも申告すべき5つのケース

特定口座(源泉徴収あり)は「証券会社が納税まで代行するため確定申告不要」と説明されますが、実際には確定申告した方が得になるケースが多数あります。最低限以下の5ケースは検討すべきです。

ケース1:複数口座(または一般口座と特定口座)の損益通算

A証券で50万円利益、B証券で30万円損失の場合、何もしなければA証券で50万円×20.315%=約10.2万円が源泉徴収されたまま終わります。確定申告すれば差引20万円のみ課税となり、約6.1万円の還付を受けられます。

ケース2:3年間の損失繰越控除

損失が出た年に確定申告しないと、翌年以後3年間の利益と相殺できません。たとえば2025年に300万円損失、2026年に200万円利益の場合、損失申告していれば2026年は税金ゼロ、申告しなければ約40万円の課税です。

ケース3:配当控除の活用(総合課税選択)

上場株式の配当は申告分離課税以外に「総合課税」を選択することもでき、その場合は配当控除(10%または5%)が適用されます。所得税率が低い方(課税所得330万円以下)は総合課税の方が有利になります。

ケース4:外国税額控除

米国株などの外国株式の配当は、現地で10%等の源泉徴収を受けてから日本で20.315%が源泉徴収される二重課税状態です。確定申告で外国税額控除を受ければ、現地源泉部分の還付・控除を受けられます。

ケース5:源泉徴収税の還付(無職・低所得者)

無職・専業主婦・学生などで他に所得がない場合、株式の配当・譲渡益には20.315%源泉徴収されていても、基礎控除等の所得控除を活用すれば全額還付できる可能性があります。

⚠️ 確定申告するときは社会保険料への影響に注意

特定口座(源泉徴収あり)の利益を確定申告すると合計所得金額に算入され、自営業者・年金生活者の国民健康保険料・後期高齢者保険料・介護保険料が増加する可能性があります。また、配偶者控除・扶養控除の判定にも影響します。所得税の還付額より社会保険料の増加額が上回ることもあるため、トータルでの損得を計算してから申告することが重要です。

上場株式等の損益通算と3年繰越控除

株式投資で損失が出た場合、確定申告により以下の節税策を活用できます(租税特別措置法第37条の12の2)。

同一年内の損益通算

上場株式等の譲渡損失は、同一年内に以下の所得と損益通算できます。

通算可能 通算不可
他社特定口座の譲渡益給与所得・事業所得
一般口座の譲渡益不動産所得
上場株式の配当所得(申告分離選択)FX(先物取引に係る雑所得等)
公社債等の利子・分配金暗号資産
公募株式投資信託の譲渡損益・分配金非上場株式の譲渡損益

3年繰越控除のシミュレーション

上場株式等で損失が出た年に確定申告すれば、翌年以後3年間にわたり繰越控除が可能です。FXと同様、連続して確定申告書を提出することが要件です。

譲渡損益 繰越控除 課税対象 税額
2024年▲400万円-0円0円
2025年+100万円▲100万円0円0円
2026年+150万円▲150万円0円0円
2027年+250万円▲150万円100万円約20.3万円

本来3年間の利益500万円に対し約101.6万円の税金が、繰越控除を活用することで20.3万円に圧縮。節税効果は約81万円となりました。

配当の3つの課税方法:どれを選ぶべきか

上場株式の配当所得は、3つの課税方法から選択できます(租税特別措置法第8条の4・第8条の5)。所得状況によって最適な選択が異なります。

課税方法 税率 配当控除 損益通算 向いている人
①申告不要制度20.315%(源泉のみ)なしなし手間ゼロ希望・社会保険料増を避けたい人
②総合課税5〜45%(累進)10%(または5%)なし課税所得330万円以下の方
③申告分離課税20.315%なし譲渡損失と通算可譲渡損失がある人・繰越損失がある人

総合課税の配当控除メリット:所得税率別の損得

課税所得 所得税率 配当控除後実効税率(所得税) 申告分離との比較
195万円以下5%▲5%(マイナスは0%扱い)総合課税が有利
195万円超〜330万円以下10%0%総合課税が有利
330万円超〜695万円以下20%10%総合課税がやや有利
695万円超〜900万円以下23%13%総合課税がやや有利
900万円超〜1,800万円以下33%23%申告分離が有利
1,800万円超40〜45%30〜35%申告分離が有利

📢 課税所得330万円が分岐点

課税所得が330万円以下の方は、配当を総合課税で申告すれば配当控除10%により実質税率0〜5%に下がります。源泉徴収された20.315%の大半が還付される計算です。一方、課税所得900万円超なら申告分離課税の20.315%が有利。「自分の所得税率はいくらか」を確認してから選択しましょう。

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新NISA口座の活用と注意点

2024年から始まった新NISA制度は、株式投資の確定申告において大きな影響を持つ非課税口座制度です。

新NISAの基本構造

項目 つみたて投資枠 成長投資枠
年間上限120万円240万円
生涯上限2つ合計で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
対象商品長期積立分散投資に適した投資信託上場株式・ETF・投資信託など
非課税期間無期限
確定申告不要
損益通算・繰越控除不可(損失は「ないもの」とみなされる)

NISAの落とし穴:配当の受取方法

⚠️ 「株式数比例配分方式」を選ばないと配当が課税される

NISA口座で保有する国内株式の配当を非課税にするには、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」に設定する必要があります。「登録配当金受領口座方式」「配当金領収証方式」「個別銘柄指定方式」では配当に20.315%が課税されてしまいます。証券会社の口座管理画面で必ず確認してください。受取方法は1つの証券口座で他の証券口座も自動的に同じ方式に統一されます。

NISAの最大の弱点:損失が活かせない

NISA口座で発生した譲渡損失は税法上「ないもの」とみなされます(租税特別措置法第37条の14第15項)。具体的には以下の制限があります。

NISAでの損失 扱い
他口座の利益との損益通算不可
他口座の配当との損益通算不可
3年繰越控除不可

長期保有で利益を出すなら最強の制度ですが、短期売買や損切が多い場合はNISAより特定口座の方が税務上有利になる可能性があります。

外国株式の確定申告:二重課税と外国税額控除

米国株・中国株などの外国株式の配当は、現地で源泉徴収された後に日本でも源泉徴収される二重課税状態になっています。

米国株配当の課税構造

段階 税率 100ドル配当の手取り
米国源泉徴収10%(日米租税条約)90ドル
日本源泉徴収20.315%71.7ドル
合計実効税率約28.3%71.7ドル

確定申告で外国税額控除を受ければ、米国源泉徴収分10ドルを所得税・住民税から控除でき、二重課税が一部解消されます。NISA口座の外国株配当には外国税額控除を適用できないため、米国株は特定口座の方が有利になるケースもあります。

給与所得者の20万円ルール

給与所得者で確定申告が不要となるケースがあります(所得税法第121条第1項)。

区分 確定申告基準
特定口座(源泉あり)のみ原則不要
特定口座(源泉なし)・一般口座譲渡益が年20万円超で必要
給与収入2,000万円超利益額にかかわらず必要
医療費控除・住宅ローン控除初年度必要(株式所得も併せて申告)

業種別シミュレーション:3パターンの納税額

📐 シミュレーション前提条件

  • 会社員(年収500万円・課税所得約240万円・所得税率10%)
  • 株式は特定口座(源泉徴収あり)で保有
  • 配当の受取方法は株式数比例配分方式

パターン1:複数口座の損益通算で還付獲得

項目 金額
A証券:譲渡益+150万円
A証券:源泉徴収済税額約30.5万円
B証券:譲渡損▲80万円
通算後譲渡所得70万円
本来の税額約14.2万円
還付金約16.3万円

パターン2:配当を総合課税で配当控除活用

項目 申告分離 総合課税(配当控除あり)
配当所得100万円100万円
所得税率15.315%10%
所得税15.3万円10万円
配当控除(10%)なし▲10万円
所得税負担15.3万円0円
住民税5万円7.2万円*
合計負担20.3万円7.2万円

*住民税の配当控除2.8%を考慮した実効負担。総合課税選択で約13.1万円の節税となります。

パターン3:3年繰越控除のフル活用

譲渡損益 課税対象 税額
2024年(損失)▲600万円0円0円
2025年(利益)+200万円0円(控除使用)0円
2026年(利益)+250万円0円(控除使用)0円
2027年(利益)+300万円150万円約30.5万円
節税効果3年合計利益750万円のうち600万円が無税。約122万円の節税効果

弊所の株式・配当確定申告サポート実例

💡 実例1:4社特定口座の損益通算で年45万円還付

10年以上の株式投資歴を持つ会社員(年収700万円)が、A証券で利益350万円・B証券で損失80万円・C証券で利益120万円・D証券で損失150万円という分散投資をしていたケース。「源泉ありだから申告不要」と思い込んでいたところ、弊所で確定申告を行い損益通算で約45万円の還付を獲得。複数口座保有者ほど確定申告のメリットが大きいことを実感した典型ケースです。

💡 実例2:配当総合課税の選択で年18万円節税(年収400万円世帯)

年収400万円の会社員(課税所得約180万円・所得税率5%)で、配当所得80万円のケース。源泉徴収で約16.3万円徴収済みでしたが、総合課税を選択し配当控除10%を適用した結果、所得税額がほぼゼロに。住民税の配当控除も加味して約13万円の還付。さらに「配当ありき」で年金収入と組み合わせていたら社会保険料への影響も考慮する必要がありましたが、給与所得者だったため影響なく純粋に節税効果が得られました。

💡 実例3:3年繰越控除フル活用で約122万円節税

2024年のテック株急落で600万円の損失を出した個人投資家。損失年に確定申告し、その後毎年連続して申告書を提出する体制を整え、2025〜2027年の3年間で利益750万円のうち600万円を繰越控除。本来3年合計で約152万円の納税が約30.5万円に圧縮され、節税効果は約122万円。「連続申告」要件を厳守したことが成功の鍵でした。

株式・配当の確定申告に関するよくある質問

特定口座(源泉徴収あり)なのに、確定申告するとデメリットはありますか?
あります。確定申告すると合計所得金額に算入されるため、自営業者・年金生活者の国民健康保険料・後期高齢者保険料・介護保険料が増加する場合があります。また配偶者控除・扶養控除の判定や、児童手当などの所得制限にも影響します。所得税の還付額より社会保険料増加額が上回るケースもあるため、トータルでの損得計算が重要です。
A証券で利益、B証券で損失。これは特定口座でも確定申告すれば相殺できますか?
できます。同じ「上場株式等の譲渡所得」の区分なので、確定申告すれば異なる証券会社の特定口座同士でも損益通算可能です。源泉徴収済の税金が還付される可能性が高いです。
NISA口座で大損しました。他の口座の利益と通算できますか?
できません。NISA口座の損失は税法上「ないもの」とみなされます。NISAの最大の弱点で、短期売買や損切が多い投資スタイルにはNISAは向きません。
配当を「総合課税」と「申告分離」、どちらで申告すべき?
課税所得330万円以下なら総合課税(配当控除10%)が有利。900万円超なら申告分離が有利。譲渡損失や繰越損失と通算したい場合は申告分離が必須です。複数の判断軸があるため、年収・他所得状況に応じた個別判断が必要です。
米国株配当で源泉徴収されました。日本でも課税されて二重課税になっていますか?
なっています。米国で10%、日本で20.315%の二重課税です。確定申告で外国税額控除を受ければ米国源泉分の還付・控除を受けられます。NISA口座だと外国税額控除を適用できないため、米国株配当を重視するなら特定口座が有利な場合もあります。
3年前の損失を今から繰越控除できますか?
3年前の損失年に確定申告し、その後毎年連続して確定申告書を提出していれば可能です。1年でも申告を欠かしていると過去の繰越権利は失効します。FXと同じく「連続申告」が絶対条件です。
給与所得者ですが、特定口座源泉なしで20万円利益。確定申告は必要ですか?
必要です。給与・退職所得以外の所得が年20万円超なら確定申告必要です。20万円ちょうどなら不要、20万円超で必要となります。
非上場株式(同族会社の株)の譲渡損は上場株式の利益と通算できますか?
できません。平成28年以降、上場株式と非上場株式の損益通算はできなくなりました。非上場株式の譲渡損失は同種の非上場株式譲渡益とのみ通算可能です。
NISA口座で配当が課税されています。なぜ?
配当の受取方法が「株式数比例配分方式」以外になっている可能性が高いです。「登録配当金受領口座方式」「配当金領収証方式」「個別銘柄指定方式」では非課税にならないため、証券会社の口座管理画面で受取方式を確認・変更してください。
専業主婦です。株式の利益が出ましたが、扶養から外れますか?
特定口座(源泉徴収あり)で確定申告しなければ、合計所得金額に算入されないため扶養への影響はありません。確定申告すると譲渡所得・配当所得が合計所得に加算され、年48万円超なら扶養から外れます。専業主婦は基本的に申告不要を選択する方が安全です。

📋 この記事のポイント

  • 株式投資の口座は4区分:特定(源泉あり)・特定(源泉なし)・一般・NISA
  • 特定口座(源泉あり)は原則確定申告不要・税率一律20.315%
  • 源泉ありでも申告すべき5ケース:①複数口座損益通算 ②3年繰越控除 ③配当控除 ④外国税額控除 ⑤源泉税還付
  • 上場株式等は3年間の損失繰越控除可・連続申告が要件
  • 配当の課税方法は3つ:①申告不要 ②総合課税(配当控除10%)③申告分離(譲渡損失と通算可)
  • 課税所得330万円以下は総合課税が有利・900万円超は申告分離が有利
  • 確定申告すると国保料・後期高齢者保険料・介護保険料が上がるリスクあり(要トータル計算)
  • 新NISAは無期限非課税・つみたて120万+成長240万・生涯1,800万円
  • NISAの落とし穴:配当受取は株式数比例配分方式必須・損失は「ないもの」扱い
  • 外国株配当は二重課税。確定申告で外国税額控除を活用
  • FX・暗号資産との損益通算は不可(別区分)

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