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事業を廃業した年の確定申告のやり方【廃業届と最終申告の手順】
事業を廃業する個人事業主・フリーランスに向けて、廃業届の提出から最終確定申告までの手順を完全ガイドします。この記事を読めば、廃業特有の処理(棚卸資産の自家消費・減価償却の月割・廃業後経費の特例)も含めて、最終申告を抜け漏れなく進められます。
🏆 結論:廃業時は届出書5〜8種類+最終申告。特殊処理5項目を押さえる
廃業時は税務署・都道府県税事務所等への届出書5〜8種類を順次提出します。最終確定申告は通常通り翌年2/16〜3/15に行いますが、棚卸資産の自家消費評価・減価償却の月割計算・廃業後経費の特例(所得税法第63条)など、廃業特有の処理が複雑です。赤字廃業でも青色なら3年繰越控除を活用するため申告した方が得なケースが多くあります。
廃業時に必要な届出書8種類
結論から言えば、廃業時には状況に応じて5〜8種類の届出書を提出します。すべてが必須ではなく、青色申告の有無、消費税課税事業者か、従業員雇用の有無で必要書類が変わります。
届出書の全体一覧
| 届出書 | 提出先 | 提出期限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届) | 税務署 | 廃業日から1ヶ月以内 | 全員必須 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 取りやめる年の翌年3/15まで | 青色申告者 |
| 事業廃止届出書(消費税) | 税務署 | 速やかに | 消費税課税事業者 |
| 適格請求書発行事業者の登録の取消し届出書 | 税務署 | 取りやめたい課税期間初日の15日前 | インボイス登録者 |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 廃止後1ヶ月以内 | 従業員雇用者 |
| 予定納税額の減額申請書 | 税務署 | 7/1-7/15 または 11/1-11/15 | 予定納税該当者 |
| 事業開始等申告書(廃止) | 都道府県税事務所 | 各自治体規定(10日〜1ヶ月以内) | 全員(自治体ルール) |
| 健康保険・厚生年金の資格喪失届 | 年金事務所 | 廃止後5日以内 | 法定業種で5人以上雇用 |
⚠️ 廃業届の提出忘れによる影響
廃業届を提出しないと、税務署は事業継続中とみなし、確定申告の案内が毎年届き、最終的には税務調査の対象になる可能性があります。罰則はありませんが、不要なトラブルを避けるため必ず提出してください。
廃業届の書き方
廃業届の主要記入項目
廃業届は開業届と同じ書式(個人事業の開業・廃業等届出書)を使います。記入項目は開業届と似ていますが、以下の点に注意します。
| 項目 | 記入のポイント |
|---|---|
| 届出の区分 | 「廃業」にチェック・廃業の事由を記入 |
| 開業・廃業等日 | 事業を実際に終了した日 |
| 事業所等を廃止した場合 | 事業所の所在地・廃止日を記入 |
| 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 法人成りの場合は法人名・代表者名を記入 |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色取りやめ届「有」・課税事業者選択届出取消「有」など |
| 事業の概要 | 廃業した事業の内容を記入 |
廃業の事由の記入例
「事由」欄には廃業の理由を簡潔に記入します。詳細を書く必要はなく、税務上の処理に影響することもありません。
- 「法人成りのため」
- 「事業転換のため」
- 「就職のため」
- 「経営不振のため」
- 「健康上の理由のため」
- 「家族の事情により」
廃業した年の確定申告の必要性
2025年改正後の申告必要ライン
廃業した年の1月1日から廃業日までの所得を翌年2/16〜3/15に申告します。確定申告の必要性は所得金額で判断されます。
| 所得金額 | 確定申告の必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 95万円超(黒字) | 必要 | 基礎控除95万円を超え課税 |
| 58万円超〜95万円以下 | 原則不要・必要時あり | 基礎控除内で所得税0だが他控除との兼ね合い |
| 58万円以下(黒字) | 不要(任意) | 所得税0円 |
| 赤字 | 不要(任意) | 所得税ゼロだが申告メリットあり |
💡 給与所得もある場合は要注意
廃業後に就職した場合、その年の給与所得と廃業までの事業所得は合算して申告する必要があります。会社で年末調整されていても、事業所得20万円超なら確定申告必須です。給与所得との損益通算で還付になる可能性もあるため、事業所得が赤字でも申告した方が得なケースが多いです。
赤字廃業でも申告した方が得な3つのケース
| ケース | メリット | 条件 |
|---|---|---|
| 源泉徴収の還付 | 天引きされた所得税が戻る | 原稿料・税理士報酬等の源泉徴収あり |
| 給与所得との損益通算 | 事業赤字を給与所得から差引で還付 | 廃業後に就職して給与所得あり |
| 青色申告の損失繰越控除 | 赤字を翌年以降3年繰越し他所得から控除 | 青色申告者・廃業後も他所得あり予定 |
損失繰越控除の活用例
🧮 廃業赤字の3年繰越シミュレーション
廃業年(青色申告):事業所得 △200万円
翌年:会社員給与年収500万円
2年後:給与年収500万円
3年後:給与年収500万円
廃業時に確定申告で繰越損失登録→ 翌年・翌々年の確定申告で200万円を給与所得から控除
節税効果:所得税率20%+住民税10%帯で約60万円の還付
廃業時の確定申告だけで翌年以降の還付権利を保全できます。
最終申告の特殊処理5項目
廃業した年の確定申告には、通常年と異なる5つの特殊処理が必要です。これらを見落とすと、税務調査での指摘・修正申告に発展するリスクがあります。
1. 棚卸資産の自家消費評価
廃業時に売れ残った商品(棚卸資産)は、事業主個人が家事消費のため買い取った(自家消費)とみなされ、収入計上する必要があります。
| 処分方法 | 税務上の処理 |
|---|---|
| 自家消費(個人で使用・処分) | 取得価額または通常販売価額の70%のいずれか高い方を収入計上 |
| 第三者へ販売・譲渡 | 実際の売却額を収入計上 |
| 廃棄処分(証憑あり) | 廃棄損として経費化(廃棄証明書必要) |
| 法人成り(在庫を法人へ売却) | 時価で法人へ売却計上(個人→法人取引) |
2. 減価償却の月割計算
廃業した年の減価償却費は、1月から廃業月までの月割で計算します。
📐 減価償却の月割計算例
業務用PC:取得価額30万円・耐用年数4年・定額法
通常年の減価償却費:30万円÷4年=75,000円/年
10月末廃業の場合:75,000円×10ヶ月/12ヶ月=62,500円
3月末廃業の場合:75,000円×3ヶ月/12ヶ月=18,750円
廃業月までの按分計算が原則です。
3. 廃業後経費の特例(所得税法第63条)
廃業日以降に支払った費用も、事業に関連するものは経費計上できる特例があります。
| 廃業後の支出 | 経費可否 |
|---|---|
| 事業所の原状回復費用(敷金返還で不足分) | 経費可 |
| 廃業後の在庫処分費用 | 経費可 |
| 廃業前の取引に関する売掛金回収費用 | 経費可 |
| 廃業前の事業に関する弁護士費用 | 経費可 |
| 廃業時の事業所清掃費用 | 経費可 |
| 廃業に伴う取引先への挨拶状送付 | 経費可 |
| 廃業後のプライベート支出 | 経費不可 |
4. 売掛金・買掛金の精算
廃業時点で残っている売掛金・買掛金・未払金等は、最終確定申告までに精算するか、未収金・未払金として帳簿に残します。発生主義での計上は廃業日までの分が対象です。
5. 予定納税の減額申請
前年所得が高く予定納税の対象になっている場合、廃業により所得が大幅に減るため、減額申請が可能です。
| 対象 | 減額申請の提出期間 |
|---|---|
| 第1期(7月)・第2期(11月)両方 | 7月1日〜7月15日 |
| 第2期(11月)のみ | 11月1日〜11月15日 |
法人成り(個人→法人)の特殊処理
個人と法人の引継ぎ処理
廃業の事由が「法人成り」の場合、個人と法人は別人格のため、資産・負債・契約を「個人→法人へ売却・譲渡」する処理が必要です。
| 引継対象 | 処理方法 | 税務影響 |
|---|---|---|
| 在庫(棚卸資産) | 時価で法人へ売却 | 個人で売却益計上 |
| 固定資産(PC・車両等) | 時価で法人へ売却 or 賃貸 | 譲渡所得 or 不動産所得 |
| 取引先との契約 | 解約・新規締結 | 取引先への通知必要 |
| 事業用預金 | 個人で精算後、法人で新口座 | 資金移動の証憑保存 |
| 借入金 | 金融機関で名義変更交渉 | 承継不可なら個人継続返済 |
| 屋号・商標 | 無償譲渡可 | 通常は無償(経済価値ゼロ) |
📢 法人成りでの消費税の落とし穴
個人事業主の消費税課税事業者が法人成りすると、新法人は基準期間がないため2年間消費税免税となります。ただし、資本金1,000万円以上の法人や特定新規設立法人は初年度から課税。法人設立直前期の売上が大きい場合の特例もあるため、消費税の有利選択は税理士への相談が安全です。
消費税課税事業者・インボイス登録者の手続き
事業廃止届出書の提出
消費税課税事業者は廃業後速やかに「事業廃止届出書」を税務署へ提出します。これにより消費税の確定申告義務が終了します。
最終消費税申告
廃業した年の消費税申告は、廃業日の翌日から1ヶ月以内に行います。所得税の確定申告(翌年3/15)より早い期限のため、注意が必要です。
インボイス登録の取消し
適格請求書発行事業者(インボイス登録者)は、登録の取消し届出書も提出します。取消したい課税期間の初日の15日前までに提出が必要です。
従業員雇用がある場合の手続き
労働保険・社会保険の手続き
| 手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働保険料申告書(確定保険料申告) | 労働基準監督署 | 廃止後50日以内 |
| 雇用保険適用事業所廃止届 | ハローワーク | 廃止日の翌日から10日以内 |
| 健康保険・厚生年金の資格喪失届 | 年金事務所 | 廃止後5日以内 |
| 給与支払事務所等の廃止届 | 税務署 | 廃止後1ヶ月以内 |
従業員への対応
- 解雇予告(30日前または30日分の解雇予告手当)
- 離職票の発行
- 源泉徴収票の発行
- 未払賃金・退職金の精算
- 有給休暇の買取(任意)
廃業後の本人の社会保険手続き
会社員になる場合
廃業後に就職する場合、新しい会社で健康保険・厚生年金に加入するため、個人として行う手続きはありません。ただし、国民健康保険・国民年金の脱退手続きは市区町村役場で行います。
専業主婦/主夫になる場合
配偶者の社会保険の被扶養者になる場合、配偶者の勤務先での扶養手続きが必要です。所得制限(年130万円目安)に注意してください。
専業フリーターになる場合
引き続き国民健康保険・国民年金に加入します。前年所得ベースで保険料が決まるため、廃業翌年は前年の事業所得分の保険料が請求されます。
個人事業税の最終処理
個人事業税の賦課時期
個人事業税(所得290万円超で5%)は、廃業翌年に都道府県から賦課決定通知が届きます。廃業した年の所得を基に計算され、廃業後でも納税義務があります。
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| 廃業日 | 事業廃止申告書を都道府県税事務所へ提出 |
| 翌年8月 | 個人事業税の賦課決定通知が到着 |
| 翌年8月末・11月末 | 2期に分けて納付(一括も可) |
死亡による廃業(準確定申告)
準確定申告の特殊ルール
事業主の死亡による廃業の場合、相続人が「準確定申告」を行います。通常の確定申告と期限・手続きが異なります。
| 項目 | 準確定申告 | 通常の確定申告 |
|---|---|---|
| 期限 | 相続開始を知った日から4ヶ月以内 | 翌年3/15まで |
| 対象期間 | 1月1日〜死亡日 | 1月1日〜12月31日 |
| 提出者 | 相続人 | 本人 |
| 追加書類 | 付表「死亡した者の確定申告書付表」 | 通常書類 |
相続が絡む場合は、相続税申告(10ヶ月以内)も発生するため、税理士への相談が必須です。
廃業時のチェックリスト
| 時期 | タスク |
|---|---|
| 廃業日決定後すぐ | 取引先への廃業通知・契約解約 |
| 廃業後5日以内 | 健康保険・厚生年金資格喪失届(5人以上雇用時) |
| 廃業後10日以内 | 雇用保険適用事業所廃止届 |
| 廃業後1ヶ月以内 | 廃業届・給与支払事務所廃止届を税務署へ |
| 廃業後速やかに | 事業廃止届出書(消費税課税事業者) |
| 廃業後速やかに | 事業廃止申告書を都道府県税事務所へ |
| 12月31日まで | 棚卸・固定資産整理・事業用口座精算 |
| 翌年2/16〜3/15 | 最終確定申告(特殊処理5項目を反映) |
| 翌年3/15まで | 青色申告の取りやめ届出書 |
| 翌年8月以降 | 個人事業税の賦課決定通知に基づく納付 |
よくある質問
まとめ
📋 この記事のポイント
- 廃業届は廃業日から1ヶ月以内・税務署へ提出
- 青色取りやめ届・事業廃止届・インボイス取消届など5〜8種類を順次提出
- 最終確定申告は1月1日〜廃業日までの所得を翌年3/15までに申告
- 2025年改正後:所得95万円超で確定申告必須・58万円以下なら不要
- 赤字でも源泉徴収還付・損益通算・3年繰越のため申告した方が得
- 特殊処理:①棚卸自家消費評価 ②減価償却月割 ③廃業後経費の特例 ④売掛金精算 ⑤予定納税減額
- 法人成りは個人→法人への時価売却処理が必要・消費税の有利選択も要検討
- 個人事業税は廃業翌年8月に賦課決定・廃業日基準で計算
- 死亡時は相続人による準確定申告(4ヶ月以内)+ 相続税申告(10ヶ月以内)
- 廃業後経費の特例(所得税法第63条)で清掃費・原状回復費等も経費化
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